一気に若返り図れるか!!
“ドン”廣野氏の辞表提出で注目される
旭川建設業界の次期会長選び

 旭川の「ドン(首領)」として君臨してきた廣野組社長の廣野忠雄氏が逮捕・起訴されたことで、旭川経済界の動きが俄かに慌ただしくなってきた。とりわけ、廣野氏が二十年にわたって支配してきた旭川建設業協会(略称・旭川建協)会長職は、すでに辞表が提出されている状況で、その後任者選びに関心が集まる。建協の会長選びは山川久明商工会議所会頭の進退にも大きな関わりを持つだけに、建設業界のみならず、その行方が気になるところ。

 

建協会長はすでに辞表提出

 廣野氏が旭川建設業協会会長に就いたのは一九八〇年。新谷建設社長だった故新谷市造氏の後を継いで八代目会長に就任。以来、十期二十年務め、今年二月には十一選され、その地位は揺るぎないものだった。

 ところが、七月十五日の逮捕劇。廣野組は後継者が決まっていない内部事情もあり、しばらくは社長職を務めると思われるが、建協の会長職については逮捕後の七月十八日、弁護士を通じ辞表が提出され「現在は副会長預かりの形で、筆頭副会長の生駒二朗氏(生駒組社長)が会長代行を務めている」(業界関係者)という状況だ。

 「以前から、『俺ももう年だ、いつ辞めてもいい』と周辺に漏らし、辞めた後は東京での生活を望んでいたようだ。事件が一段落したら旭川を離れ、東京へ行ってしまうのではないか」と話す、廣野氏に近い経済人も「これほど早く辞表が出されるとは思わなかった」と驚きを隠せない様子。

 「廣野さんの逮捕にはびっくりしたが、新聞に『自分が指示してやった』と供述していると書いてあったのを見て、さすがと思った。責任逃れせず、すべての責任を負う態度は立派。いかにも廣野さんらしい態度。辞表は業界のことを考えてのことだろう」と廣野シンパの一人は解説する。


まだ育っていない?新谷氏

 さて、そこで気になるのが“ポスト廣野”の行方。協会内部では「廣野さんから出ている辞表の扱いをはじめ、いつ理事会を招集するのかなど、今後の方針や具体的なスケジュールは、まだ何も決まっていない」(協会理事)というのが現状のようだ。

 しかし、業界内では「これを機に一気に協会の若返りを図り、農業土木談合事件などで低下した業界のイージを一新してはどうか」という意見も聞こえ始めている。

 「まず現在の役員が総辞職し、新たに会長はじめ役員を選出するという形を取ることで、業界は新しく生まれ変わったというイメージができる」(中堅建設業者)という意見だ。

 そこで、現在の旭川建設業協会の主な理事の顔ぶれを見てみる。

 ◇会長 廣野忠雄(廣野組)◇副会長 生駒二朗(生駒組)、新谷龍一郎(新谷建設)◇理事 盛永孝之(盛永組)、荒井宏(荒井建設)、黒木柾策(北野組)、生駒武(丸駒建設)、土肥一哲(タカハタ建設)、山田宏紀(橋本建設工業)、川島崇則(川島建設)、太田秀明(赤川建設興業)、飯塚達二(丹野組)、荒木毅(大北土建工業)。

 こうして見ると、前出の中堅業者が言うように、いったん理事が総辞職して出直したとしても、現在の体制が大幅に入れ替わることは考えにくく、現実に「これを機に若返りを図ろう」という意見も、次期会長に現在副会長である新谷建設の新谷龍一郎社長を念頭に置いた発言であることは間違いない。

 「新谷さんは筆頭副会長の生駒さんと並ぶ副会長で、年齢は四十八歳と若い。旭川JCの理事長を務めたこともあり人望も厚く、建設業以外の若手経済人の間にも幅広い人脈を持つ。

 廣野さんは以前から新谷さんを可愛がっており、若い新谷さんを協会の副会長に据えたのも、自分の後継者として育てることが狙いだった。

 しかし、本来ならもう一人立ちしてもよさそうな時期なのだが、なかなか周囲の期待に沿えるようなところまで成長していないのが現状で、廣野さんも『新谷はまだ思うように育っていない』と周囲に不満を漏らしていた。

 新谷さんは人柄もいいが、廣野さんのような強引なタイプではなく、廣野さんにとっては、そういうところに不満があるのではないでしょうか」と解説する業界関係者もいる。

 また、新谷氏については「何年も副会長を務めているが、こういう状況になっても、新谷さんではまだ早いと言う声がもっぱら。仮に新谷がさん会長に就いても、このままでは若手がついていくかどうか疑問」と言う声も少なくない。

 しかし従来のように、業界全体に睨みをきかすような威圧感を持った人が業界のリーダーであり続ける時代は終わった。

 協会の会長は廣野氏のような「力」を持ったボス的な人間でなくてもよいという見方もあり、若手の新谷氏が抜てきされる可能性も残されている。


順当なら盛永氏か生駒氏か

 盛永組の盛永孝之氏もポスト廣野の有力候補の一人だ。昭和十年生まれの六十五歳で、廣野氏より十歳若く、若返りも果たせる。旭川商工会議所第十代会頭・盛永要の子息で、若い頃はJC理事長として活躍。市長候補に名前が挙がったことも度々あり、人物的には申し分ない。

 ただ、盛永氏は本誌が前号で報じた通り、商工会議所の有力な次期会頭候補でもある。過去、会頭と建協会長を兼任した例はなく、協会のトップ就任は微妙な情勢だ。

 しかし、山川会頭は廣野氏という重石が取れて、かえって、自分の思い通りにやれるようになり意欲満々。山川会頭の続投があるような情勢となれば、盛永氏の建協会長就任も有力となりそうだ。

 若手の中では川島建設社長の川島崇則氏(五〇)も十分リーダーシップを発揮できる人物だ。旭川北高、北大大学院卒業の経歴を持ち、建協二世会の会長を務めたこともある。

 物腰も柔らかく理路整然とした話には説得力があり、周囲の信頼も厚い。一気に会長ポストまでは考えずらいが、新谷氏が会長に就けば、補佐役で副会長という声も上がってくるかも知れない。

 廣野氏と年が一つしか違わず、若返りという視点からは外れるが、廣野氏から出ている辞表を受理した後、おそらく会長代行を務めることになる筆頭副会長の生駒二朗氏が、そのまま会長に就任するという可能性も十分ある。

 「生駒さんが一期か二期務め、その後に新谷さんにバトンタッチするという見方が一番妥当だろう。しかし、廣野さんがああいう状況になったので生駒さんは、(業界のことは)俺がしっかりやらなくてはと思っている。新谷さんは、いつかは俺の番が回って来るとのんびり構えているところがあるので、そのまま生駒さんの時代が続く可能性もある」(協会理事)

 さらに、廣野氏が一線を退いたとしても、その影響力が全くなくなるとは言い切れない。「院政を敷いて、この先も業界に君臨し続けることも十分あり得る話だ」とみる向きもある。

 「建協会長は新谷、商工会議所会頭は盛永」というのが廣野氏のかねてよりの構想だったとも伝えられているが、今後、建設業界のトップに誰が就くのか、山川会頭の進退と合わせ目が離せない。