“買収”の疑いで事情聴取された市議10数人
選挙の常識“議員活動費”が裁かれる

 廣野忠雄氏らの逮捕劇と並行して市民の関心が集まるのは、今津選対から金を受け取ったのではないかとされる旭川市議会議員らの今後。保守系議員十数人がこれまで再三にわたって警察の事情聴取を受けており、ことによっては、複数の逮捕者が出るという市議会始まって以来の重大事に発展する可能性も……。

 

買収工作の対象は十数人か

 これまでの情報によると、衆院選の公示を間近に控えた六月上旬、今津ひろし後援会事務所の所長や、今津選対の川田修局長=公職選挙法(特定寄付受領の禁止)違反容疑で逮捕、送検=が、市議の自宅や四条三丁目にあった選対事務所内で、十数人の議員に現金を配ろうとしていたことは確実と見られる。

 選挙期間中のみならず、候補者やその事務所が金品をばらまくことは、すべて公職選挙法違反(買収)に当たる。これは選挙や政治に関心のない人でも分かる、きわめて当たり前のこと。もちろん配る方も、もらう方も、このことは十分承知していたはず。

 それなのに現金が配られ、受け取った議員もいるというウワサが流れるのはなぜか。発覚すれば法の裁きを受けることになり、社会的立場はもとより、せっかく手に入れた議員生命さえも危ぶまれることは火を見るより明らかなのに……。

 実は過去の衆院選挙においても、活動費という名目で当然のことのように金が配られていたと証言する元議員や現職議員がいる。いわば、千票単位の集票能力がある議員に“活動費”を提供することは、選対として当たり前のことだったのである。しかしなぜか、そのことが選挙違反として事件に発展した例はない。

 やりとりの証拠が残らないためか、この種のものは警察としても立件が難しい。毎回、選挙違反の摘発に躍起になる警察にとっても、現金による買収工作を裏づけることは、きわめて厄介な作業なのである。

 飲食を伴う違反行為には、領収書が残っていたり、複数の証言が得られるケースが多い。物品の供応にも形が残る。しかし現金だけはそうはかない。渡していない、もらっていないと供述されれば、その先へはなかなか進むものではない。

 今回の“買収疑惑”でも、六月二十五日の選挙戦終了直後から数多くの関係者が警察の事情聴取を受けており、市議にしても多い人では十回以上呼ばれているというが、八月五日現在、際立った進展は見られない。しかし警察としては、八月中にはなんらかのカタをつけたい考えのようだ。


証拠ビデオや写真がある?

 警察の捜査が表面化するようになってから、巷間しきりと話題に上っているのが「現金受け渡し現場の写真やビデオ、録音テープが存在している」といった内容の話。

 「ビデオを見たという人から聞いた話だが…」と断って、こんな話をしてくれた人物がいる。

 「選挙事務所の一室で、真ん中に廣野さんが座っていて、その両脇に川田選対局長と今津事務所の所長が立っていた。封筒に入った現金らしきものを廣野さんが手渡していた」

 この人物によれば、その封筒を誰に渡したのかまでは映っていなかったということだが、「ビデオは警察も入手している」とも言っていた。また、録音テープについても「廣野さんの声が入っていたと聞いている」と話している。

 ビデオにしろ録音テープにしろ、選挙事務所の常識からいって、こうしたものが存在しているとは考えにくい。

 確かに、ビデオカメラやテープレコーダーは小型化が進んでおり、人に気づかれず作動させることができるかもしれないが、外部に知れると一大事となるような現場に、ビデオやテープを操作する人が入り込むということは難しい。テープはともかくビデオについては、問題を膨らますために誰かが作り上げた話ではないだろうか。

 ただ、写真だけは実際に存在するものと思われる。その写真には、市議の自宅を訪ねた今津事務所の所長の姿が写っていると言われている。なんのことはない。情報をつかんで尾行していた警察が写したものであるようだが、その写真に授受の現場が写っているわけではないという。

 警察の執拗な取り調べを受け「証拠写真もあるんだぞ」と自白を迫られた市議たちも、「その写真は見せてもらえなかった」と口をそろえている。「本当にあるのなら見たいものだ」と強気の市議もいる。


選挙では現金授受は当然?

 過去の衆院選で、何度も選対本部に入って中枢を担っていたある自営業者は、こう証言する。

 「どこの選対でも、市議や道議に金を渡すことは、選挙では当たり前のことです。しかしそれが選挙違反になることも当然知っているわけですから、決して証拠を残すようなことはしません。

 今回の今津選対の場合は、わざわざ議員の自宅にまで出向いて、金を渡そうとしたケースもあると聞いていますが、選挙戦では相手陣営や警察が尾行を付けていることも十分考えなければなりませんので、選対の人間が金を運ぶということなど、選挙の常識ではありえないことです。

 選対の中に、いわゆる選挙をよく知っている人間がいなかったということじゃないですか。そう言えば選対がお粗末だったために、市議二人を含め数十人の逮捕者を出したこともありましたね。昭和四十七年の衆院選、大矢健の選挙のときでしたよ」

 金を出すのも常識、もらうのも常識。そんな選挙戦の常識が、法律の前に打ち砕かれたのが今回の一件と言えよう。

 しかし「自宅に来たことは認めるが、そのまま帰ってもらった」「手渡されそうになったが、押し返した」「自宅でも事務所でも受け取った事実はない」などなど、買収工作が行われたのではとウワサされる議員たちは、全員が金銭の授受を否定している。

 これらの“否定”をそのまま鵜呑みにするわけにはいかないが、できることならそうした言葉を信じたい。だが、選対が渡したとされる二百万円、百万円、八十万円、三十万円という金額が、受け取り人の実名付きで、ウワサ話として流布されているのも悲しい現実である。

 ここへ来て「警察には、せめて三〜四人の市議は逮捕に持ち込みたいという決意があるようだ」と伝えられているが、この先いったいどういう経過をたどるのか予測は難しく、警察や地検の動きを見ていくしかない状況だ。


疑いをかけられた日、私には“アリバイ”がある

武田勇美市議 新聞報道などでは保守系の市議会議員十数人が買収工作の対象になっていたとされ、市民はもとより議会内部でも疑心暗鬼の状況が続いている。  積極的に、関わりを否定する議員もいれば、黙り込む議員もいる。そんな中、昨年来の菅原市長問題で真相追及の急先鋒に立った公正クラブの新人・武田勇美議員(四八)から、「少なくとも、自分に投票してくれた四千五百人余りの人たちにだけは、真実を知ってもらいたい」と、本誌を通じて身の潔白を証明したいとの申し入れがあった。以下は武田議員との一問一答。(七月二十八日)

これまでの報道の中では、今津氏の秘書を務めていた市議とか、今津氏直系の市議といった表現で、選対から十数人の市議に現金が配布されたという疑惑に武田議員が深く関わっているのではないかとのウワサがありますが。

武田 今回の選挙期間中で、現金を配布して歩いたとされる選対の方と私が行動を共にしたことは一度もありません。今津氏の息子さんや娘さんを連れて企業訪問をしたことはありますが、それ以外に私が選対の人と一緒に動いたことはありません。

保守系議員の大半が警察の事情聴取を受けていますが、武田議員の場合はどうでしたか。

武田 七月八日朝に警察から「話を聞きたい」と連絡があったので、午前中の予定が終わったあとで警察に行きました。

 そこで聴かれたことは、今津氏のこれまでの選挙に関わることや選対内部のことでしたが、その後で「今津選対が市議にお金を配ったのではないかという疑惑があるが、あなたは六月四日に川田修氏(選対局長)から事務所で金を受け取っていないか」と聴かれました。そして「あなたと川田氏が事務所の部屋に入っていくのを見たという目撃証人が四人いる」という話も聞かされました。

 いったい誰がそんな証言をしたのか分かりませんが、六月四日と言えば、私がPTA会長をしている西神楽小学校の運動会があった日で、その日は朝から午後九時ころまでずっと西神楽にいましたので、四条三丁目の選対に顔を出すはずはありません。

 警察は「一回くらい事務所に行かなかったか」と、しつこく聴いてきましたが、運動会の後の反省会でビールを飲んでいましたので、その日は車の運転もできませんでした。事務所に行くわけがありません。つまり、警察に疑いをかけられた六月四日は、私にはアリバイがあるのです。

それで警察は納得したのですか。

武田 一日だけではまだ聴き足りないということで、次の日も呼ばれました。警察は「証拠の写真もある」と言っていましたが、本当にあるのなら見せてもらいたいものです。

 風評では、私が二百万円もらったことになっているようですが、まったく根も葉もないことです。


私は“圧力”には屈しない

今回の一連の疑惑は、今津派の道議、市議、取り分け公正クラブの市議会議員がターゲットにされているように感じますが。

武田 選挙違反の問題が政治的駆け引きの材料にされているような気がしてなりません。

 また、菅原市長問題では、問責派の私はまだまだ急先鋒の立場を取り続けようと思っていますが、そんな私の動きを抑え込もうという、強力な圧力がかかってきたという気がしています。

 しかしこれからも、いまだ終着点に達していないエコ・スポ問題、市長問題などには、正々堂々と立ち向かっていく覚悟です。心ない風評に負けているわけにはいきません。リベンジしますよ。