廣野氏逮捕の真のネライは?
違法寄付は認めているのになぜか長引いた勾留
旭川政財界のドン(首領)として君臨し続けた廣野忠雄氏(廣野組社長)の突然の逮捕劇があったのは七月十五日(土)。その後二日間取り調べられ旭川地検に送致、十日間勾留の後さらに十日間延長して、八月五日起訴された。通常この種の事件では、ここで保釈金を積んで釈放されるものだが、廣野氏の場合はなぜか十日まで認められなかった。「どうやら警察側の真のねらいは、単なる選挙違反だけではなさそう」という声がもっぱらだ。
建設18社に寄付要請を行う
廣野氏や同時に逮捕された山田宏紀氏(橋本建設工業元社長)の容疑は、「国や地方自治体の仕事を請け負う企業は選挙の候補者に寄付をしてはならない」とされる公職選挙法(特定寄付および勧誘の禁止)に違反したというもの。
保守系の選挙では、建設業者が資金提供を行うのは毎度のこと。少なくとも年一回はあるパーティー券の購入はもとより、いざ選挙事務所を構える段になると、事務所経費、印刷経費等の捻出のために、各企業に対して寄付を要請する。その要請に一番応えてくれていたのが建設業者だ。
起訴状などによると今回の違法寄付は、廣野氏と山田氏が共謀して建設業協会の役員企業十八社に、会長・副会長の企業が百万円ずつ、理事・監事の企業が五十万円ずつ出すことを要求したものとされているが、それに応じた企業には罪の意識など全くなかった。過去の選挙では、いつもやっていたことだからだ。
中には「選挙法も変わってきている。この時期(公示間近の六月七日)に寄付をして大丈夫なのか」と不安を感じた企業もあったようだが、選挙事務所が旭川市選挙管理委員会に問い合わせたところ「詳しく分からない」という返事だったため、そのまま確かめずに実行してしまった。
それでも、万が一のことを考えて企業名義で寄付をせず、個人寄付の形をとった経営者もいたようだ。廣野氏らの要請に応えて寄付した十八社のうち四社は個人寄付、二社は国の工事を請け負っていない、一社は建設業協会の会員でないということで、書類送検も免れている。
企業として寄付に応じたというある経営者は、
「橋本建設の山田社長に、紙に書かれた寄付金額一覧を見せられ、『このように決まったからよろしく』と言われた。山田社長に言われたが、当然これは廣野社長が決めたことだと思ったので、すぐ指定された口座に振り込んだ。違法行為だとは思ってもいなかった」と振り返る。
不可解な廣野氏の長期拘束
「新聞報道などでは、今津選対の川田修局長が『選挙資金が足りなくなってきたので何とかならないか』と廣野さんに頼んだと伝えられていますが、あの川田さんがそんなことを廣野さんに言えるわけはない。頼んだ人がいたとすれば別の人でしょう。あるいは逆に、廣野さんの方から『金は足りているか?』と聞かれて『足りません』と答えたのかもしれません」(今津選対関係者)
この話からも伺い知れるように、廣野氏に直接、金のことを依頼できる人間は選対内でも限られている。仮に川田局長が廣野氏に話したとしても、とうてい一人の考えで依頼したものではないはずだ。
建設業者が寄付した約一千万円の金は、自民党第6選挙区支部(今津寛支部長)の口座を通って、間違いなく今津選対に入っている。誰が頼んで、誰が受け取ったのかは、司法にとっては大事なことかもしれないが、警察がこれほどまでに、違法寄付を指示したと見られる廣野氏を長々と拘束し続けたのはなぜなのか。
廣野氏は、長期間に及ぶこれまでの取り調べで、自分が各企業に寄付を指示したことは認めている。誰に頼まれたかについては、川田局長の供述と異なる部分があるようだが、寄付を指示したことを認めているわけだから、弁護士の保釈請求に即座に応じなかった検察の考えが不可解だ。
簡単な選挙違反事件ではよほどのことがない限り、起訴が決まった時点で保釈される。とすれば今回の廣野氏の容疑は、選挙違反にとどまらないものと見るのが自然だ。勾留期限が切れかけたころ、別件で“再逮捕”のウワサが流れたのもなにか意味ありげだ。
大型公共工事と大物政治家
「警察の真のねらいは別にある」という見方が蔓延している。それはどうも、廣野氏が長年牛耳ってきたとされる公共工事に関わりがありそうだ。廣野氏には“政商”と言われる一面があり、今津氏を通じて、本道を代表する自民党政治家とのつながりも深い。
大型公共工事が行われるたびに、背後にいろいろな政治家の影がチラチラするのは当たり前だが、このところやけに目立つようになってたのが、選挙中に今津氏の支援に三度もかけつけた自民党本部の幹部。廣野氏はこの大物政治家の後援会長も務めている。
昨年、高速道路の深川―旭川鷹栖間の四車線化が決まったのも、大物政治家の強力な力添えがあったからとされているが、工事予算三百億円と言われるこの大型事業には、多くの建設業者が名乗りをあげ、その調整には廣野氏も深く関わったと見られている。
「大型工事と大物政治家。ここに必ず何かあると見当をつけるのは自然の成り行き。警察の捜査の目も、実はこの辺に向いているのではないか」と勘ぐる人も多いが、なるほどそう考えれば、廣野氏の取調べがここまで長引いたのも分かる。
地方都市における単純な選挙違反事件がこの先、全国的なニュースに発展していく可能性もあるかもしれない。