夫よ!不正医療に加担するのはもうやめて…
吉田病院勤務医の妻が苦悩の“証言”
やっぱりあった診療報酬の不正請求!!
医療法人慶友会「吉田病院」(旭川市四条西四丁目、吉田威院長)が不適切な診療報酬の請求を行っていたとして、すでに受け取っていた診療報酬の一部を自主返還するよう行政指導を受けていたことは本誌八月号で報じたが、その後、本誌に寄せられた情報により、同病院が診療報酬の“不正請求”を繰り返していた疑いがますます強くなった。
情報提供者は、吉田病院に勤務する現職医師夫人のA子さん。「不正を指示する吉田院長に手を貸す夫をこれ以上見ていることは出来ない」と勇気を振り絞って証言、「病院の悪事に加担するのはもう止めて」と訴えたのだった。
迷った末の“告発”
A子さんから本誌編集部に初めて電話があったのは七月下旬。八月号で報じた「吉田病院のモラルを問う」の記事が大きな反響を呼んでいた頃だ。
一回目の電話では、自分は吉田病院に勤務する医師の妻であることを告げた上で、吉田病院では病院ぐるみで診療報酬の不正請求を行っていること、そしてその事実を本誌に告発すべきかどうか相当迷っているということを話し、決心が着いたらまた電話するというものだった。
二回目の電話があったのは八月十七日、「まだ迷っているが、話す決心ができた。気持ちが変わらないうちに早く会って話がしたい」というので、早速、A子さんの自宅まで取材に出向いた。
そこで聞いた話は、本誌がなかなか確証を得ることが出来なかった、吉田病院が行っていると噂されていた診療報酬の不正請求に関するものであった。
この先は、Aさんの証言を交えながら、吉田病院で恒常的に行われていたと思われる“不正”を追っていくことにする。
「私の夫は吉田病院で内科の医局長代理をしています。吉田病院に関しては、よくない噂がいろいろありますが、これからお話することは私自身が関わったことですから間違いのないことです」
マスコミへの告発を「迷いに迷った」というA子さんには心身ともに疲れ切った様子も見られたが、気力を振り絞って気丈に話を続けた内容は次のようなものだった。
吉田病院では九八年九月から翌九九年三月まで、健康診断(健診)という名目で一人一日千円の負担金で受診者を集め、人間ドックと同等の検査を実施していた。人間ドックや健診は本来、保険診療の対象とはならず、診療報酬の請求は認められていない。
しかし吉田病院では、健診で来院した人についても検査入院(通常、どこか具合が悪く病院を受診して行われる検査は保険の対象となる)と偽って診療報酬を不正に請求していたというのだ。
検査入院と偽り診療報酬を請求か
「一昨年(九八年)の九月下旬だったと思います。保険証を持ってくれば、一日千円(一泊二日であれば二千円。食事も付いた)で人間ドックのような検査が受けられる。医師にもノルマが与えられたので何人か紹介してくれないか、と夫から話がありました。
急にそう言われたのが九月も十日ほどを残すだけの時。私は『そんなことして大丈夫なの?』と念を押したら、『(吉田)病院が予防医学に力を入れるという方針の一環として実施するものだ』ということだったし、時間も無かったので急きょ知人関係に電話して二十五人ほど集め、夫に紹介しました。
当然、千円や二千円では検査費用は賄えません。一部病院が負担したのかもしれませんが、ほとんどは検査入院と偽り、「保険診療扱い」として診療報酬を請求していると思います。それは間違いありません。本来の請求額が記載された書類を私が預かって、受診した本人に渡しています。それらには十数万円〜二十数万円の金額が書かれていましたから。
夫の話では、一日千円の負担金で受診者を集めることは、一般の会社でいうと“キャンペーン”のようなもので、特定(十人前後)の職員にノルマを課したそうです。公になるとまずいので、職員全員ではなく、十人前後の管理職だけだったのではないでしょうか。私が聞いていたのは、院長と院長夫人、医局長、婦長、主任看護婦、そして主人などです。
ノルマは一ヵ月最低でも三十人。私はそれ以降、翌年の三月までに少なくとも知人を九十人程度紹介しています。こうしたことは吉田院長と院長夫人の指示だと思います。あの病院はすべて院長と奥さんの意思で動いていますから」
匿名の職員からも同様の情報
A子さんの言う通り、十人前後の職員に一人当たり月三十人のノルマを課していたとするなら、六、七ヵ月の間に二千人前後の人が健診を受けたことになる。そして、それらの費用は検査入院と偽り、「診療報酬」として不正請求していたというものだ。
〈九八年十月、一泊二日で健診を受けたというSさんの話〉
私と二人の知人の三人で検査を受けました。内容は胃と腸のバリュウム検査、心電図、血液検査、レントゲン、婦人科系の検査などを行いました。
その日の朝食は抜いて行きましたが、昼食、夕食、そして翌日の朝食は病院で出してくれました。検査によっては食べれない人もいましたが、特に異常はないと言われた。血液検査などの結果は後日郵送されてきました。
私たちの場合は一泊二日だったので支払ったのは二千円だけ。確かに二千円だけでした。
八月号発売後、A子さんのほかにも編集部には様々な情報が寄せられた。中にはこんな情報もあった。
「吉田病院の実態はあんなもんじゃない。人間ドックでは、(客を)連れてこい。健康保険証を持って来れば自己負担分はタダにしてやるという内容の文書が昨年(九九年)、理事長名で職員に配布された。
そして、(客)を連れてくれば一人当たり幾らというバックマージンがもらえるんですよ。その文書はいまでも持っています。職員は何かあったら自分の身に降りかかってきたら大変なので皆それを持っているんですよ」。
そう話してくれたのは、現在も吉田病院で働いているという匿名希望の職員だ。
個別指導の前にカルテを“改ざん”
さらにA子さんは驚くべき事実を話してくれた。それは“カルテの改ざん”とも考えられる信じられないものだ。
「昨年の十一月か十二月だったと思います。行政の指導が入るというので、こうした一日千円の健診は中止となりました。
そして、指導が入るという直前の約一ヵ月間は、相当カルテのやり繰りに時間を費やしたそうです。徹夜作業も何度かあり、主人の帰りが遅いので『どうしたの』と聞くと『指導が入るからカルテのやり繰りで大変なんだ』と話していました。
行政の指導が入ればカルテやレセプト(診療報酬明細書、審査支払い機関によってチェックされる)などがチェックされます。そうすると、不正がバレるかも知れませんから、うまく切り抜けられるようにカルテなどを“やり繰り”したのでしょう。
そうした改ざん作業は、限られた数人で行われていたようです」
北海道社会保険事務局などによる吉田病院の個別指導は今年一月と六月に実施され、不適切な診療報酬の請求を行っていたとして、同病院が平成十一年から平成十二年五月までに受給していた診療報酬の一部を自主返還するよう指導が行われたが、その際、病院の医師らに対し、担当官からかなり厳しい追及があったようだとA子さんは言う。
「個別指導の時、担当官に患者のカルテを突きつけられて『医師としてなぜここまでやるんだ、医者として恥ずかしくないのか』ということまで、言われたそうです。
それでも、『今回の指導で自主返還額は八千万円〜一億円くらいになるが、それくらいで済んだからまだ良かったのではないか』と話しているようで、罪の意識など、ほとんどないようです」
職員とその家族のカルテを悪用
健診を検査入院と偽り診療報酬を不正請求した上、行政の個別指導が入るとなれば、それがバレないようカルテを「やり繰り」するといった信じられない吉田病院の実態を話してくれたA子さんだが、もっと驚くことは「私のカルテには身に覚えのない病名が記載されていた」というのだ。これは何を意味するものなのか。
「これはある看護婦さんが言っていたことなのですが、吉田病院には一ヵ月の売り上げのノルマがあるらしいのです。そのノルマが達成しない場合は、職員や家族に対する診療行為や投薬があったことにして、そのニセの内容をカルテに記入、架空の診療報酬を請求し、売り上げが足りなかった分を補填しているというのです。職員や家族は診療費がかかりませんから、架空の診療行為や投薬があったとしても本人には分かりません。それをいいことにカルテを悪用しているようなのです。
たまたま、私は自分のカルテを見たことがあるのですが、私がかかったことのない病名が記載してあったり、投薬があったことになっていました。また、主人の名前で私の友達に薬をあげたりしたということはしょっちゅうありました」
こうした、職員やその家族のカルテを悪用しているという話は、本誌に電話で情報を寄せてくれた同病院の職員という人からも「職員のカルテには身に覚えのない病名がズラリ並んでいます」という証言があった。
そして、カルテの悪用は同医療法人のグループ内の特養施設でも行われているというのだ。
「吉田病院のグループに養生の杜カムイ(市内永山町五丁目)という特別養護老人ホームがありますが、そこの入所者のカルテも悪用しているようです。例えば特養を退所して自宅療養しているにもかかわらず、その人を吉田病院に入院していることにして、保険請求しているというのです」
朱に交わり染まってしまった夫
A子さんが吉田病院の不正について証言すれば、当然、同病院の医師である夫は苦しい立場に立たされる。それを承知であえて本誌に対して証言することを決心させたのは、ある出来事がきっかけだった。
「私がこのようにマスコミに対しお話しようと思ったのには、一つのきっかけがありました。
実は、私の夫は今年四月に病院で倒れました。日赤病院に運ばれ精密検査しましたところ、幸い過労が原因の一時的なものということでした。
日赤には一晩入院して、あとは自分の病院(吉田)で入院して静養した方がいいという話でしたが、主人は入院せず、すぐに職場に復帰しました。
この時、主人は入院は日赤での一日だけだったのですが、そのあと、自分が契約する生命保険会社に対し「入院給付金」を請求していたことが分かったんです。おそらく同僚の医師に偽の診断書を書いてもらって保険会社に請求したのではないかと思います。
入院もしていないのに、入院給付金を請求することは詐欺行為です。私は主人にそういうことはいけないと、かなり言ったのですが聞き入れてもらえませんでした。
私はそういう主人を見ているのが耐えられないのです。夫は、もともとは正義感の強い人。正直で一本気、融通の効かない人だった。だんだん朱に交われば赤くなるというか、吉田病院に勤めるようになってから、だんだん自分自身も染まっていった。
どうしてそんな不正が平気でできるようになったのでしょうか。それが何よりショックでした。特に経済的に困っていることはないんですが、きっと世間を甘く見ているのではないでしょうか。いつのまにか不正に慣れてしまって、いまでは主人も世間を舐めているのだと思います。
詐欺容疑で告発もある
私は何度も『吉田病院にいてはだめ』と言いましたが、これも聞き入れてくれません。
吉田病院で働く医師の妻がマスコミに対してこのようなお話をすることに抵抗があったのですが、このまま主人が吉田病院にいるのであれば、どんどん深みに入ってしまうのではないかと心配です。他の病院で働く医大の同期の先生方も心配してお電話をくれたりします。
主人は私がマスコミに話をすることを薄々知っていますが、私にも覚悟があります。主人は、どこかで、きちんと人間としての軌道修正をしなければならないと思います。世の中、奇麗事ばかりで通るようなものではありませんが、あまりにも、悪事が堂々とまかり通ることは良くないと思います。
こうした事実が公になることで、主人が社会的な制裁を受け、今後医者としてやって行けるのか、私たち夫婦の間にも溝ができてしまうのではないのかと、相当悩みました。しかし、どこかで、誰かがきちんと話をしなければならないという思いが私の中にありました。真実を追及するためにも私が知っていることをお話しすることにしたのです」
A子さんが証言するこれらのことが事実であれば、吉田病院は当然、保険医取り消し処分となるばかりか、道警から詐欺容疑で告発される可能性も十分ある。今後、北海道社会保険事務局の徹底した調査をはじめ、捜査当局もに真実の追及を行ってもらいたい。