手形偽造、詐欺で刑事告発された
元生保トップセールス内田哲子女史
全国的にも知られた生命保険トップセールスから損保・リースの会社を興し、女性実業家として羽振りを利かせていた内田哲子女史が個人破産したのは昨年十一月のこと。債務者の数、その額は個人破産としては異例のもので、詐欺的手段での“金繰り”に被害者となった個人、企業からは「悪人でも破産が認められるのか」と怨嗟(えんさ)と罵声(ばせい)があがっていた。あれから十ヵ月。今度は被害者の一人から「手形偽造と行使、詐欺」で刑事告発された。
自己破産に被害者の罵声
押し、粘り、巧みな話術―これが内田哲子女史(六三)の特徴だ。
昭和四十年から平成八年まで約三十年間生保(第一生命)セールスとして働き、培われたものだろう。第一生命時代、同社で契約高全国二位という輝かしい記録を十年余りにわたってキープするという“偉業”が物語っている。
第一生命に勤務していた平成二年には損害保険代理とリース業の(株)和宏を設立し社長に就任した。生保セールスで多くの企業に出入りするうちに資金需要のある契約者にノンバンク融資を紹介、また手形割引の仲介などをしていたが、和宏設立はそうしたビジネスの“延長”だった。設立パーティーには旭川経済界のそうそうたるメンバーが居並び、内田女史の人脈と実力をアピールしたものだった。
六年間はトップセールスであり同時に和宏社長。“和宏専業”となるのは第一生命を辞めた平成八年一月以降だ。並みの男では太刀打ちできない実力と多彩な人脈を生かし、和宏の経営も順風満帆であろうと傍目には見えていたが……
第一生命を辞め和宏専業となって二年を過ぎた平成十年頃から「複数の企業、個人の手形を借り出し、操作している」とのうさん臭い話が出回るようになり、翌十一年に入ると「“仕事を紹介する。ついては手付金がいる”と言われ金を渡したが、話はそれっきりだ」「“困っている会社を助けたい。迷惑はかけない、期日までには返すから”との話に乗って手形を貸し出した。担保にパーソナル小切手を置いていったが、銀行に問い合わせると“残高ゼロで使えない”と言われた」などなど“金繰り”に関するトラブルが次々に噴出。ついには倒産する企業(マツウラ(株))まで出て混乱が一段と広がる中、本人は法的な借金整理の手段、自己破産申請し、昨年十一月八日に破産宣告を受けた。
金繰りに関するトラブル続出―混乱の中での自己破産申請・宣告の経緯は、本誌今年一月号『自己破産した元生保トップセールスに翻弄された“被害者”たち』で報道済み。
重複するので詳細は避けるが、「個人破産は私が持つ一億三千七百万円の債権確保のため。これ(一億三千七百万円)が入ってくることにより、迷惑をかけている方々の返済ができる」と内田女史が主張。これに対して被害者側からは「そんな話は信用できない。詐欺的行為で多くの個人、企業に被害を与えた者でも自己破産が認められるのか」と罵声が飛んでいた。
個人破産では異例届出債権六億円超
ともあれ、押し、粘り、話術で内田女史は破産宣告までこぎつけた。宣告から二ヵ月半たった今年一月二十六日には債権者集会が開かれ、破産管財人・広瀬隆司弁護士から債権者名と届出債権の額が書き込まれた調査表がくばられた。
「債権者S=小切手百八十万円、約束手形二百四十八万円。
債権者Kファイナンス=一般債権十五万六千円……」と続くこの表には、三十四の一般債権者名と届け出があった債権額が書き込まれている。その額、合わせて六億五千四百万円。不況、倒産、リストラと厳しい経済情勢を反映して個人破産は全国的に急増しているが、債務の額が億単位という個人破産は異例だ。参考までに、公租公課も加えると三十五件、六億七千四百万円を超える。
巨額な届出債権に対し、資産は旭川市台場に建つ住宅の土地と建物、五条十一丁目のマンションなど。しかしいずれも抵当権が設定されている。
破産申請した時点で内田女史は、関係者に、また本誌に対し「市内の会社に一億三千万円余りの債権を有する。自己破産することでこれを確保でき、返済にあてられる」と主張していたが、破産管財人の裁判所に対する報告書にはこう記されている。「破産者(内田)の主張に対し、相手方からは一億三千五百万円余りの反対債権があるとし、相殺の主張が行われている」。
「内田の言っていることは、破産申請が認められるまで債権者が騒ぎ出さないようにするための詭弁」との批判があったが、結果的にはそうした批判通り、債権者に返す財源などどこにもなかったのである。管財人の報告書の結論も「破産者内田哲子の資産は皆無に等しい。一般債権者に対する配当は不可能」というものだった。
旭川地方検察庁へ8月31日告訴
しかし、破産宣告を受けたといっても、被害にあった債権者の怒りはそう簡単に、収まるものではない。甘い言葉に騙されてとらの子をなくした会社員、医院の経営に響くほどの損害を負った開業医、手形を騙し取られて経営危機に見舞われた経営者など、いまだに内田女史を深く恨んでいる者は多い。
内田女史自身は「一生懸命働いて、少しでも迷惑をかけた方々にお返ししたい」と、得意のセールス分野で元気に活動しているが、今となってはそんな言葉を信用する者はいない。
「内田のやったことは許すことができない」と、複数の企業は警察に被害届を出し、厳しい追及を求めている。警察の動きに内田女史も相当神経を尖らせていたが、半年、十カ月とたっても大きな動きがないことから「官憲の手は及ばない」と高をくくっている様子である。
しかし、八月三十一日付で、旭川地方検察庁に、被害者の一人であるAさん(旭川市)から告訴状が出された。罪名は「有価証券偽造、行使、詐欺」。
告訴状によると、
「平成十一年八月二日、久保組(当麻)の約束手形を持ち込み、割引金として六百二十八万円を受け取った。しかし支払期日に取り立てに出すと偽造を理由に不渡りとなった」
「同年九月十三日、振り出し先マツウラ(株)でオリックス(株)の裏書がある約束手形を持ち込み、ミヤ工業(株)(旭川)振り出しの千五百万円の手形と交換。しかし、オリックスの記名ゴム印と代表者印はいずれも偽造されたものであった」
これによりAさんは約二千六百万円の被害を蒙ったという。
Aさんは、昨年末からたびたび旭川警察署に足を運んで、捜査追及を求めていたが、大きな進展がないために検察庁への告訴に踏み切ったものだ。
「私のように被害にあった人はたくさんいる。それだけ大きな被害を与えておきながら、内田は旭川近郊で今も金銭の借用を繰り返していると聞いている。到底、許すことはできない。当局には厳重な捜査と処罰をお願いしたい」とAさんは強い口調で訴えている。
検察庁はどう対応するのか。裁判所に提出された破産管財人の報告書にも「詐欺的手段で知人友人、法人から資金を調達し」とあるように、明らかに内田女史に“非”がある。この問題は今後どのように展開していくのか注目される。