東神楽町 農協専務らの
“ヤミ水田(幽霊反別)”疑惑発覚
共済掛金も税金も払わず数10年、役場は見て見ぬ ふり?
東神楽町内に、今年だけでおよそ十五町歩に及ぶヤミ水田(幽霊反別 )があることが分かった。しかもそれに関わっているのは現職の農協専務をはじめ、町や農協の代表監査役や監事、さらに農業委員、元教育委員長、元民生委員といった同町の顔役ばかり。所得税をごまかし、共済金も払わず不当な収穫を続ける実態を、役場も農業委員会も長年見てみぬ 振り。善良な水田農家の不満は募る一方だ。
町長は調査を約束したが…
農家は毎年「作付面積実態報告書」を役場や農協、農業委員会に提出することが義務づけられている。それぞれが所有する農地をどのように利用しているかを図面や数字で表わして報告するもので、これは自主申告となっている。
「町内の水田面積を掌握する東和土地改良区の資料と、現実の水田面積に大きな差が出ている。正規の水田以外にヤミ水田が存在するのではないか」という情報を得た同町の柿崎勝男議員(建設常任委員長)が、各農家の「作付面積実態報告書」を取り寄せ、実際の状況と照らし合わせてみると、とんでもないでたらめぶりが浮き彫りになってきた。
本来は宅地や山林、原野であるものが水田になっていたり、奨励金をもらって永年転作したはずの畑が水田に変わっていたり、タコツボ(溜め池)だったものが水田に姿を変えていたものもあった。また「作付面積実態報告書」そのものに虚偽の記載があるものさえあった。
「農家はみな、少しでも水田面積を増やしたいと思っている。しかし生産調整で厳しく取り決められ、せっかく実った稲でさえ、余分な部分は刈り取らされる。そんな苦い思いをしながら決まりを守っている農家が大半の中で、社会的に立場のある者たちがいい加減なことをやっているのは許されることでない」(柿崎議員)として、今年六月に開かれた第二回定例議会で、関崎定治町長にこの問題をぶつけた。
その時のやり取りを同町議会が発行する「議会だより」で再現すると―
柿崎 立場のある人が違反行為をしているのをどのように指導し、対処するのか。この行為により、わが町における弊害は計り知れないものがあると思う。
町長 違反行為およびそれに関わる影響などについては把握していない。
柿崎 役場に資料が届いているにも関わらず、分からないというのは理解に苦しむ。まじめに営農にいそしんでいる人たちに大変な迷惑を被らす行為ではないのか。
町長 農家の皆さんの申し合わせで今の耕作面積が決まっている。過去から、皆さんが同じような条件で税負担するというルールがあるので、今後は区長を中心に調査し調整していくことになる。
改良区の分類では“特殊田”
六月議会で調査を約束した関崎町長は、さっそく各行政区の区長に「議会からヤミ水田(幽霊反別)の指摘を受けたので、部落で会合を開き、水田面積に変動があるのならすみやかに調査してほしい」という内容の通達を出し、八月二十八日までに報告を受けることになった。
しかしその調査の結果はすべて「問題なし」。各区長がどのような調査をしたのか詳細は分からないが、この結果について柿崎議員は、
「きちんとやっている農家はみんな実情を訴えたいのだが、近所付き合いの関係もあって、それを言える状況にはない。しかし不正があることは明らかだ」として、今後も役場の管理、監督体制のずさんさを追及していく構え。
柿崎議員の調査によると確証をつかめた分だけでも、東神楽農協専務の豊田英昭氏、同代表監査役の中田友春氏、同監事で元町長の息子の水上康典氏、同元代表監査役の大西岩雄氏、町代表監査役で元町議会副議長の川浦岩雄氏、元教育委員長で元町議の岸本源正氏、元民生委員の石川勝幸氏といった立場のある人たちが不正行為に関わっていた。
農協の豊田専務は、以前はタコツボ(溜め池)であったところを二反歩以上の水田に変え、それを他の農家に賃貸していた。中田氏は山林や宅地を水田に変え、しかもそれを造成する際にはパワーアップ事業で国や道、町からの助成金(事業費の九五%)を使っていた。岸本氏や石川氏も宅地を水田に変えていた。
このようなヤミ水田は、農家にとっては強制保険とも言える共済金を掛ける必要がない上に、作況調査もされないので米を収穫し販売した所得にも税金が掛かってこない。本来は水田でないわけだから共済組合も税務署も目が行き届かないのである。
しかしそれでいて、東和土地改良区の賦課金だけは払っている。これは、同土地改良区がヤミ水田の実態をつかんだ上で、実情に合わせて賦課しているからで、毎年の調査は行政よりもきちんと行われていることを物語る。
ちなみに土地改良区では、役場や共済組合が把握している水田の面積と合わない部分については“特殊田”という言葉を作り、普通田、休耕田とは別のものという分類をしている。この特殊田こそヤミ水田そのものなのだが、賦課金が入ればそれでいいという考えなのか、表立った告発もせず、長年やり過ごしているのが実態である。
脱税額は6百万円に上る?
土地改良区の運営にも関わるある農業経営者は、東神楽町の水田のでたらめぶりを憂いている。
「私たちの場合は調整水田といって、しろかきだけして田植えをしないところがある。そこに稲が何列か余分に植えてあったら、秋に穂が実ったとしても刈り取らなければならない。
そこまでして決まりを守っているのに、休耕奨励金をもらっていながら稲を植えていたり、永年転作のところを水田にしているところがある。役場も農協もみんな分かっているのに知らない振りをしている。もってのほかだ。
四反も五反も共済掛金も払わず、税金も払わないで稲を植えているとなると、隣の人であっても、あいさつもしたくなくなる。このままでは人間関係が悪くなる一方です。八百長は許せません」
共済組合の賦課金は一反当たり約三千四百円。ヤミ水田が十五町歩あるとすれば五十万円以上が不払いになっている。また、一反当たり十俵の米が取れたとすると、その税金は四万円前後で、実に六百万円ほどの“脱税”を行っていることにもなる。
「このような不正行為は善良な他の農家に大きな影響を及ぼすものです。米の生産調整が厳しくなる中で、今年が豊作だと来年はまた作付け面積を減らされるでしょう。ヤミで米を作っている不届きな人のために、善良な農家の水田がどんどん減っていくのです。
関崎町長は、融和と協調をうたい、東神楽の基幹産業は農業だと言いながら、農業者の融和と協調を壊すような不正を長年見過ごしています。農業改良普及員から役場に入って農業委員会事務局長、産業課長、助役、町長になった農業に精通した人が、町内の水田の実態を知らないはずはありません。
もしも本当に知らないのなら、すぐに行政自らの手で現地調査をして確認するべきです」(柿崎議員)
東神楽農協には五百二十七戸の正組合員がいる。このうちヤミ水田を作っているのは、柿崎議員の調査では二十戸ほどになる。全体の数からすれば四%にも満たない僅かな数字ではあるが、その大半が社会的立場のある人ということになれば放ってはおけない。
九月十八日から始まる町議会は、柿崎議員の鋭い追及で波乱を呼びそうだ。