実質的オーナー・日本ゴルフ振興が営業休止を表明
旭川市は緊急避難的財政支援で今冬の営業継続を要請
経営不振カムイスキーリンクス
営業継続に菅原功一市長の“英断”
道内でも屈指の規模を誇るスキー場・カムイスキーリンクスの実施的オーナーである日本ゴルフ振興(本社・大阪市、大西進社長)が打ち出した「今冬の営業休止」は、各方面に大きな衝撃を与えた。これに対し旭川市は「経済的影響が大きすぎる」として緊急避難的に今シーズンに限り数千万円規模の財政支援を決めたが……
ピーク時の半分
旭川市神居町西丘にある『カムイスキーリンクス』は八四年十二月オープン。最長四千メートルのコースなど八コースをもつ道内でも有数のスキー場だ。
オープンの前年八三年に第三セクター『旭川神居山スキー場』(大西進社長、資本金五千万円)が設立され、ここがスキー場を運営してきた。持ち株数は、ゴルフ場経営国内大手の日本ゴルフ振興が八百九十株(四千四百五十万円)、旭川振興公社が七十株(三百五十万円)、旭川市が四十株(二百万円)。
九割近くを出資する日本ゴルフ振興が実質的オーナー。市が株を所有したのは「国際スキー連盟(FIS)や全日本スキー連盟(SAJ)のコース公認を受け、全国高校スキーや冬季国体など大規模な大会を誘致したい」との考えから。市が株主として参加することで開発行為もスムーズに進む。日本ゴルフ振興と旭川市の思惑が一致してのスタートだった。
二シーズン目に全国中学校スキー大会が開かれたのを皮切りに、全日本スキー選手権、全国高校スキー大会など大きな大会が毎シーズン開かれるようになり、八六年度入場者は百八十五万人(リフト・ゴンドラ利用)に達している。
しかし、この八六年度のシーズンがピークで、以後、徐々に入場者数は減り、九八年度は百万人を割り込み、昨シーズンは約九十万人にとどまった。スキー人口減の影響をモロに受けた格好だ。
ただし、入場者減に悩んでいるのはカムイスキーリンクスだけではない。全国的な、また、全道に百三十余りあるスキー場が頭を抱える共通の問題。北海道索道協会のまとめた道北のスキー場のリフト利用者総数を見ても、この十年で半減している。
相次ぐキャンセル
関係者によると、
「日本ゴルフ振興では三年程前からカムイスキーリンクス売却の方針を決め、旭川市にもその意向を伝えていた。
“毎年約一億円の赤字が続き黒字化のメドがつかない。好況時は本業の収益で補えたが、不況でゴルフ場の業績も悪化している”というのが理由。
今冬の営業休止は北海道新聞が九月二十七日付けで報じ市民の知るところとなったが、これより以前に今冬のクローズは旭川市やスキー競技関係者に伝えられていた。年が明けて二月に入ると全国中学校スキー大会や北海道スキーマスターズ大会が控えている。早く休止を告げておくほうが良いとの配慮からだ。
市は九月四日に“何とか営業を継続してほしい”との要望書を出したが、営業継続のための具体的な方策や対策は何ら示さなかった。ただ、お願いするだけでは、日本ゴルフ振興の方針も変わりようがない。
そうこうするうちに、来年二月五日から八日の日程でカムイスキーリンクスを会場に開催される全国中学校スキー大会出場者への案内状発送などのタイムリミットが近づき、中体連関係者などに焦りの色が濃くなり、話しも広まり、道新の記事となった」
道新の報道で、最も衝撃を受けたのはホテルなどの観光関連業者だ。
営業休止の記事だけでショックが大きいのに、報道(九月二十七日)直後から、スキー客の予約キャンセルが各ホテルに相次いだ。
「ローカルニュースで、首都圏などにはまだ伝わっていないはずなのに、インターネットなどで知ったのか、キャンセルの電話が続いています。この勢いでは、グランドとニュー北海ホテル合わせて二千五百人を超えるキャンセルがあるのではないかと心配しています」(旭川グランドホテル)
貴重な観光資源
旭川のホテルの客室稼働率は、北海道観光のピーク七月、八月は八〇%近くまで達する。逆に、端境期(はざかいき)の十一月や四月は三〇%台。稼働率三〇%というのは人件費すら払えない完全な赤字。
冬期間も厳しいが、冬まつりとスキー客で、何とか五〇%台をキープしている状態だ。
「個人のスキーツアーもそうだが、それ以上に貢献度が高いのが競技大会。規模の小さなものはほかのスキー場でもできるが、大きな大会は旭川ではカムイスキーリンクスでなければ開催できない。
カムイが営業を止め、大きな競技大会が旭川にこないとなると、影響は甚大。
ホテル、旅館業者の問題にとどまらない。一つ大会があると、さんろくなどの飲食街もうるおうし、小売り業、タクシーなどの運輸業、印刷やクリーニング、通信などにも波及する。
大まかな捉え方だが、千人規模で一億円の経済波及効果があると言われている」(市内の観光業者)
つまり、単なるスキー場ではなく、貴重な冬の集客力のある観光施設なのである。
危機感を抱いた観光業者などから旭川市に対し「営業継続へ向け行政も最善の努力を」との要望が相次いだ。
「助成金を出す。また、必要ならばすべて買い取り、市営としてでも、何としても」というのが観光業界の気持だ。
振興公社の手で
重要な施設だという認識は市ももちろん強く持っており、善後策の検討に入った。
買収するには多額すぎる。資金援助で営業を継続する方策もあるが、他のスキー場から批判の声があがるのは避けられない。菅原市長もかなり頭をいためて十月五日に出した結論が、「今シーズンに限り、数千万円規模の財政支援を行なう」というものだった。
財政支援の理由として市は1.年明け二月の全国中学スキー選手権大会が迫っている2.公認コースを持っている市内唯一のスキー場で、大会誘致に不可欠3.周辺農家の冬の雇用問題もある―などを挙げた。
与党市議の解説―
「とりあえず、二月の中学スキー選手権は開催したいという緊急避難的対策。額は決まっていなかった。
まずは財政支援の用意があることを相手に示し、交渉のテーブルにつく。
数千万円の持ち出しに相手が応じ、営業継続してくれるのかどうかはこれからの話。あるいはさらに、追加的な対応が求められるかも知れない」
五日に出したこの案をもとに日本ゴルフ振興との話し合いが行われ、十日になされた“合意”が、「一億円近くに達する赤字の支援策として三千万円を助成。とりあえず今冬は営業を継続する」。三千万円の助成金を盛り込んだ補正予算案は十一月の臨時市議会に提出されることとなった。
今冬の営業継続が決まったことで、観光業界、また全国中学スキー大会関係者はほっと安どの表情で、菅原市長の英断を歓迎している。
ただし、来シーズン以降どうするかは残された課題。重ねて言うがカムイスキーリンクスは旭川にとってはなくてはならない存在だ。日本ゴルフ振興は全国に展開しているスキー場とテーマパーク事業からの全面撤退を決めており、旭川市としては、旭山、嵐山、伊ノ沢の三つの市営スキー場を管理運営する旭川振興公社が全面的に引き継ぐしかないのではないだろうか。たとえ財政的負担が生じても、街のためになる政策だ。
中華航空チャーター便への期待
急がれる旭川空港のCIQ体制
カムイスキーリンクス問題が、観光業界の懸念材料だとすれば、「冬の観光客増につながる」と期待を込め注目されているのが中華航空(本社・台北市)の旭川―台湾チャーター便就航だ。
中華航空は、これまでチャーター便運航は新千歳を発着としていた。ところが、ライバルのエバー航空(本社・台北)が今年三月から事実上の定期便となる週三往復の新千歳―台北間運航を開始。「台湾の定期的な便が就航した日本の空港へは台湾の別会社のチャーター便は原則として運航できない」という日台間の取り決めがあり、中華航空が新千歳を使えなくなったものだ。
道内他空港の利用を迫られた中華航空は、とりあえずこの十月から函館乗り入れを開始。出国を旭川空港からと考えている。
道のまとめによると、台湾から道内への観光客は、宿泊者ベースで九七年度が五万二千八百人、九八年度が九万三千七百人、九九年度が十二万千百人で年々増加している。「旭川へのチャーター便乗り入れが決まれば、冬の観光振興にこれほど力強い話はない」と、観光業界は歓迎している。
ただし、問題は、税関、出入国審査、検疫各当局(CIQ)。旭川空港では日本人客を対象とした海外チャーター便の発着実績はあるが、外国人受け入れの経験はない。設備、スタッフともに急いで体制を整えなければならない。出国空港として名乗りを挙げている釧路、稚内(両空港ともにCIQ体制が敷かれている)がライバルだ。
カムイスキーリンクス開催の
全道・全国規模の大会(実績と予定)昭和60年2月 全国中学校スキー大会
61年2月 全日本スキー選手権大会
62年2月 全日本スキー選手権大会
63年2月 全国高校スキー大会
平成 元年2月 はまなす国体冬季大会スキー競技
3年1月 全道中学校スキー大会
2月 全日本スキー選手権大会
3月 北海道スキーマスターズ大会
4年1月 国体北海道予選
3月 北海道スキーマスターズ大会
5年1月 全国高校スキー大会
2月 北海道スキーマスターズ大会
3月 全日本スキーマスターズ大会
6年1月 全道高校スキー大会
2年 北海道スキーマスターズ大会
7年2月 北海道スキーマスターズ大会
8年2月 北海道スキーマスターズ大会
2月 北海道スキー選手権
9年1月 全国中学校スキー大会
10年1月 全道高校スキー大会
11年2月 北海道スキーマスターズ大会
12年1月 全道高校スキー大会
北海道スキーマスターズ大会
平成13年2月 全国中学校スキー大会
14年2月 全日本スキーマスターズ大会
15年1月 全日本学生スキー選手権(インカレ)
16年2月 全国高校スキー大会