被告=廣野忠雄氏、山田宏紀氏、川田修氏


今津派幹部選挙違反事件
初公判で分かったこと


 先の衆院選で公職選挙法違反(特定寄付の勧誘・受領の禁止)の罪に問われた今津氏派選対幹部の廣野忠雄氏(元廣野組社長)、山田宏紀(元橋本建設工業社長)、川田修氏(元前田理工常務)=いずれも保釈中=の初公判(三人一括)が十月十日午前十時から旭川地方裁判所(遠藤和正裁判長)で開かれた。
 検察側の起訴事実・冒頭陳述の内容には、特に目新しいものはなかったが、川田氏の承認として法廷に立った今津選対事務局長の宗万雅一氏(鶴間組常務)は、「川田氏が選挙中に(廣野氏に)金を要求した場面は見たことがない」と、川田氏自身が直接、選挙資金を廣野氏に要求したことはなく、事件への関与も自主的なものでないことを証言した。


起訴事実を認める

 裁判は検察官の起訴状朗読から始まった。起訴事実は「廣野氏と山田氏は共謀して、国の公共工事受注業者らに対して選挙資金の寄付を要請、川田氏がその金を受け取った。この行為は、国や自治体の仕事を請け負う業者が寄付することや、候補者側がそれを受け取ることを禁止する公選法に違反する」という内容のものだったが、並んで被告席に立った三人は、裁判官に対しそれぞれ「異議ありません」(廣野氏)、「その通り間違いありません」(山田氏)、「間違いありません」(川田氏)と答えた。

 その後、検察官の冒頭陳述が始まったが、その中では「選挙事務所の活動資金が一千万円程不足していることを聞いた廣野氏が、旭川建設業協会の会長と副会長(二人)が百万円ずつ合計三百万円、他の役員(十四社)が五十万円ずつ合計七百万円を負担することを決め、山田氏にその手配を依頼した。山田氏から寄付を依頼された十四社は、廣野氏の意向には逆らえないと、それぞれ指定された口座に振り込んだ。口座を管理していた川田氏がそれを受け取った」という経過が述べられたが、これらはすでに報道されている内容であり、特に目新しい事実は出てこなかった。

意味深だった証人の発言

 この後、弁護人側証人として三人が出廷した。

 最初に証言したのは、公私ともに長年、広野氏と親交の深い石山直行氏(石山組社長)。石山氏は留萌建設業協会会長で元道議。

 広野氏とのつきあいの始まり、また広野氏の人となりなど、弁護士の質問に次のように答えた。

 「若い時から知っており、お付き合いをさせていただいている。お互いに好きなのでゴルフなども一緒にやりました。豪放磊落で、時代を見通す、先見性に優れている人です。常に業界のために東奔西走されている。包容力が大きく、潔癖な方です。また、自分のことは出さず、業界のためを第一とする姿勢です」

 さらに「平成八年に夫人が亡くなられた時の悲しそうな姿、あれほど落ち込んだ広野さんを見たことがありません」と続けた。

 入廷後約一時間、これまで背筋を伸ばし顔を挙げ、毅然としていた広野氏だったが、石山氏の話が他界した夫人に及ぶと、動揺し涙を見せ、鼻をかんだ。前後に体を動かす状態がこの後続く。

 「保釈された広野さんを訪ね『大変でしたね』と言うと、『自分の不徳で山田さんをはじめ多くの人に迷惑をかけた。この歳になってなんで俺はこんな不徳を……』と。私も言葉がつまって何も言えませんでした」

 石山氏は涙声になり、広野氏の前後への体の揺れもさらに大きくなった。

 二番目に出廷したのは川島建設社長の川島崇則氏で、山田被告の人柄などを語った。

 「山田さんは大学(北大)の先輩でもあり、家族ぐるみのお付き合いをさせていただいております。山田さんは第一級の経営者であり、人望がきわめて厚い。ゴルフやスキーを始めれば二、三年でセミプロの腕前になり、ほかにも多く趣味を持つ多彩な方です。

 釈放後、『勉強不足で多くの人に迷惑をかけた。迂闊で残念。広野さんの社会的地位、功績をだめにしてしまった』と山田さんは話しておられました。

 事件を機に社長の職を辞したのは、山田さんらしい潔い身の引き方だと思いますが、まだお若く、会社にとっても業界にとっても大きな損失であると残念に思います」

 最後に証人台に立ったのは鶴間組常務の宗万雅一氏。前の二人が、広野氏、山田氏のそれぞれの友人として心情を語り、両被告共に罪を悔いていると情に訴え、酌量を求める発言だったのに対し、宗万氏の証言は微妙な表現を含みながらも、より積極的に川田被告の“罪の軽さ”を訴えた。

 宗万氏は今津氏の選挙があるたびに選対事務所スタッフとして事務所に入っており、そこで川田氏との親交を深めた。川田氏の人柄については「懐が深く、やさしく、スタッフが近づきたくない苦情処理なども厭わず、すごい人だなと思っていました。今度の選挙でも、看板立てやポスター張りなどの雑用を嫌がらずやっていました」

 そして、川田氏と選挙資金の関わりについては次のように証言した。

 「支払いは、事務所の女性スタッフが伝票をまとめ、川田さんが目を通し、大きな金額は今津さんにどうしたらいいか聞いていた。入金はかならず今津さんに報告していた。建設業協会からの金については『今度、協会から金が振り込まれるんだ』と話していた。

 (川田氏が企業に寄付を頼める立場なのかとの弁護士の質問に答えて)「川田さんは手伝いで選挙事務所に入っている人であり、選挙が終われば会社に帰って行く人です。寄付は、金の貸し借りであり、手伝いの人間が選挙の金を集めることはしません。それをするのは今津さんや今津事務所の人です。

 川田さんは、父親の川田正則さんの衆議院選挙の時の借金を、誰も面倒見てくれなかったので、土地を売ったりして自分で処理しました」

 選挙での金の貸し借りには一番敏感になっているはずの川田氏が、自らの意思で企業に金を要求するはずはないという状況を、裁判官に理解してもらうための証言だったようだ。

市民が本当に知りたいこと

 今回の初公判で初めて明らかにされたことは、ほとんどなかった。一部には、捜査当局が今津派市議十数人に対して参考人聴取した内容も明らかにされるとの見方もあったが、一言も触れられずに終わった。

 また、廣野氏らの逮捕についても、ねらいは別にあるという観測が強く流れたが、それについても何の答えも出していない。次の公判は十月三十日午前十時からと決まったが、おそらく市民が本当に注目する問題については、今後も未解決のまま進んでいくだろう。