行政の支援受け学校用家具に新たな活路
市場拡大目指す旭川家具・木材業界

 旭川市の一般会計補正予算に家具・木材業界支援策として学校図書館への旭川家具導入費五千万円が計上された。同市ではすでに菅原市長が小、中学校の学習机といす約三万セットをすべて旭川家具に切り替える方針を明らかにしている。木に囲まれた生活は子供の知能・情緒の発達にも良いとされ、最近では学校の内外装に木材が多用されており、教育現場への旭川家具の導入は単なる業界支援にとどまらず、子供たちの豊かな情操教育にもつながると教育関係者から歓迎の声が上がっている。

まず図書館用家具を整備

 旭川市では、今年完成した旭川空港ビルの待合ロビーや市立旭川病院など新築された公共施設に積極的に旭川家具を導入するなど、木材・家具業界の支援策を次々と打ち出しているが、今春、五社が短期間のうちに倒産するといった、かつてない危機的状況に見舞われている。

 この春、菅原市長は、旭川家具の新たな市場拡大を図るため、小・中学校の学習机といす約三万セットをすべて旭川家具に切り替える方針を明らかにしている。しかし、机やいすには一定の規格があり、現在、業界や旭川市工芸センターがデザインや機能を検討しているものの、整備までに時間がかかる。

 今回の補正予算五千万円の計上は、規格のない図書館用の家具を導入することで、苦境に立つ業界を緊急処置的に支援しようという狙いから。

 市内の小、中学校の図書館で老朽化が進み、更新時期にある書架や閲覧机、いすなど、市教委が七月に各学校に行った意向調査をもとに、図書館整備を要望する小学校三十二校、中学校十七校を対象としている。

JIS規格改正を機に入れ替え

 小、中学校の机・いすを旭川家具に切り替えようという方針は、今年の四月、旭川市と周辺町村の家具メーカーで組織している「旭川家具工業協同組合」(長原實理事長)が主催する「旭川家具危機突破集会」に出席した菅原市長が明らかにしたものだが、教育現場への旭川家具導入の背景には日本工業規格(JIS規格)の改正がある。

 学校用家具のひとつ、教室用机・いすはJIS規格に定められた製品が導入されている。しかし、近年、パソコンなど多様な教材が日常的に使用されるようになり、学校の教育現場では一斉授業により整然と机を並べて行う学習形態だけでなく、多目的スペースを含む広い教室を利用してティームティーテング、グループ学習、個別学習など、一人ひとりの個性を生かした多様な学習形態をとることが求められるようになった。

 文部省では、これらの現状に対応するためJIS規格を改正、「机(天板)の大きさを四〇〇ミリ×六〇〇ミリから四五〇〜五〇〇ミリ×六〇〇〜七五〇ミリに拡大する」という趣旨の通知を平成十一年八月二十六日、全国の教育委員会などに行った。

 また、机・いすの材料・材質について定められていた詳細な規定は取り払われ「有害な物質の使用だけを規制する」ことだけになり、「温もりを感じさせることのできるような木製の机の導入などの妨げとならないようにすること」と事実上、木製品の導入を文部省が奨励した形となった。

 旭川市ではこのJIS規格改正を機に、市内の小・中学校の机・いす約三万セットをすべて旭川産の製品に入れ替えることを決め、新JIS規格が標準化する二〇〇三年(平成十五年)一月一日を待たずに、発注体制を整えていく方針で、七月からは業界や市工芸センターが新JIS規格に合わせた机・いすの試作品づくりに取り組んでいる。

 「タモ、サクラ、ダテカンバ、クルミ、イタヤカエデ、キハダといった道産材を天板に用いるなど、六種類の試作品が完成間近。教師をはじめ、教育関係者らでつくる検討委員会に諮り、最終的には三種類程度に絞りんで、教育委員会に提案したい」(市工芸センター)

単なる産業支援ではない

 学校教育の分野も物品を必要とするという意味では一つのマーケット。文具・備品などは地元の業者が現場へ出入りしながら営業活動を続けているが、教室用の机・いすの市場は五〜六社の大手メーカーによる寡占状態が続いていた。

 確かに、この大手メーカー数社による大量生産で一セットの価格は六千五百〜七千円程度に抑え、各自治体の財政面を支えてきた。しかし、その反面、明日の日本を担う子供たちが使う机やいすが、価格オンリーで調達され、地域性も無視されてきたことも、また事実である。

 そうした事情を鑑みると、今回のJIS規格改正を機に、旭川市が地場産品である旭川家具を教育現場に導入する意義は大きい。「木に囲まれた生活は子供の知能・情緒の発達にも良いとされ、最近では学校の内外装に木材が多用されており、教育現場への旭川家具の導入は単なる業界支援にとどまらず、子供たちの豊かな情操教育にもつながる」と教育関係者からも歓迎の声が上がっており、また「はじめに業界支援ありきではない。子供たちにより良い環境を―という視点に立っている」と市教委も明言している。

 さらに、「学校教育の中で地域性を育むことができる」と言うのは旭川家具工業協同組合の長原實理事長。長原理事長は「行政による産業支援は大変有難い」とした上で、次のように続ける。

 「北海道の森林面積は日本の森林面積の二〇%を占める。木材・家具産業は重要な道内の産業であり、教育現場でもっと積極的に木質系の素材が多用され、温かみのある家具が使われるようになれば子供たちに地域性が身に付くと思う。そういう意味では、学校の机・いすにも旭川らしさがあってもいい。

 私たち業界としては、単なる行政の産業支援という視点だけではなく、これからの教育はどうあるべきか、ということを真剣に考えながら、地域産業と教育の一体化を目指し、試作品づくりに取り組んでいる」

販路拡大のチャンスになるのか

 こうした業界の、学校用家具の分野での取り組みが一定の評価を得れば、他都市の学校にも旭川家具を売り込むチャンスが生まれることになる。新しい活路を見出すことが出来ると期待する声があるが、どうなのか。

 「そういう視点は当然、業界としては持っている。しかし、全国まで販路が拡げられるかは難しい。

 というのは、全国で同様のことを考えている市町村はたくさんある。例えば我々より早く学校用家具に取り組んでいる岐阜県は、すでに飛騨高山市に机といすをセットで二万三千円程度で発注している。

 岐阜県は日本でも有数の山林を持った地域で林業も盛ん。そして、高山市は家具の産地。そういう背景から岐阜県はいち早く方針を取り入れて、従来の予算を大幅にアップして子供たちのために導入を決めている。

 全国に林業が盛んな地域はたくさんあり、同様の動きがある。従来、市場を寡占してきた大手メーカーも、今後どういう対抗策を講じてくるか分からない。極めて激しい競争になるだろう」(長原理事長)と厳しい見方。

 また、こうした見方もある。

 学校用の机・いすは十年〜十五年のサイクルで更新されており、毎年二千〜三千セットが新しくなっている。例えば二年か三年間で市内の小・学校の机・いす約三万セットを一度に更新してしまうと、その後十年間はまったく需要がなくなるというのだ。となれば、旭川市の産業支援も一時的なもので終わってしまう可能性もある。

 それだけに、市内だけでなく、他都市への販路拡大が切に望まれているのである。