|
歴史教科書問題がさまざまな方面に波紋を呼んでいる。
来年のサッカーワールドカップの日韓共催が決まって以来、一段と盛り上がっていたスポーツ交流の中止や延期が相次ぎ、全国各地で姉妹都市交流の見直しも行なわれている。
実は、8月7日に旭川市公会堂で行なわれた韓国水原(スウォン)市の市立交響楽団演奏会も、一度は延期が決まった。
ご存知の通り、水原市は旭川市の姉妹都市である。提携以来、相互訪問などで交流を深めてきた。韓国国内はもちろん、国際的にも評価の高い市立交響楽団は、ワールドカップ開催のPRを兼ねて、水原市から「ぜひとも旭川で公演を」と申し入れがあったものである。しかし、7月下旬になって「今回は旭川のほか台湾、インドネシアも訪問予定だが、インドネシアの政情不安から延期したい」との申し入れがあった。表向きの理由は「インドネシアの政情不安」だが、真の理由はやはり歴史教科書問題のようであった。
幸い、両国の親善協会など関係者の働きかけで、予定通り、開催の運びとなった。
前日夜、ニュー北海ホテルで催されたレセプションでは旭川の5つの女声コーラス団体が歓迎の心をハーモニーで表現し、両市の友好関係は一段と深まった。演奏会当日、会場には大勢の音楽ファンが押し寄せほぼ満席で、高いレベルの演奏に盛んな拍手が送られた。
教科諸問題は非常にデリケートなテーマである。歴史的に日本は何度か侵攻を試みており、韓国の人たちの心の奥にある屈辱感は簡単に拭い去ることのできるものではない。
作家の辺見じゅんさんがロータリーの地区大会の講演でこんな話をされた。「私たちが21世紀の子どもたちにバトンタッチをするものの一つとして『歴史』をあげたい。例えば、戦争を『もう50年』ではなく『まだ50年』という視点でとらえ、しっかりと次の世代に引き渡すこと。それが国際社会の中での日本のあり方として大事。歴史を直視し、そこから私たち一人ひとりが歩むことです」。
半世紀もたってそろそろいいのではないかとの考えは甘いと警鐘をならしている。
日本の教科書は、教科書出版会社がつくったものを、各自治体ごとに学識経験者や教師、父母からなる選定委員会が審議して採択を決める。今回の歴史教科書問題につき韓国側が修正要求を出したが、日本政府はその要求に応じていない。政府がこと細かに表現をチェックし規制でもしたら、それは国定教科書となってしまうのである。このような日本の教科書採択制度を理解してもらいたい。
現実に「つくる会」の教科書の採択は道内ではなかった。韓国国民は非常に神経を尖らせ心配していたが、選定委員会は「国家主義の色濃い歴史観は教育現場になじまない」と判断したのである。
教科書の記述を巡って論争が行われること自体は良いことだと思う。ただ、そのために交流事業を延期、中止するのは行き過ぎである。交流を絶やさないことこそが、歴史に対する共通認識の幅を広げていくことだと思う。
市立交響楽団の演奏会が予定通り開催されて本当に良かった。グリークのピアノ協奏曲、ブラームスの交響曲の演奏に引き続き、旭川市民合唱団と一緒にモーツアルトの歌曲などを共演、会場は割れるような拍手に包まれた。
まさしくこの光景は友好のきずなのハーモニーであり、音楽に国境のないことを実感した。この後、水原市のサッカーと囲碁の交流も予定されている。旭川市と水原市の交流が一層盛んになり、日韓友好の一翼を担えればと願っている。
|