旭川から発信する情報コンテナ月刊北海道経済
月刊北海道経済は創刊以来40年。旭川市を中心とする道北地域の政治・経済・文化の話題を発信している雑誌です。

野中氏と野村氏に共通するのは「策士」という印象。では政治と野球に共通するものはとなると直ぐには思い浮かばない。野村氏は野球を組織・人材・リーダーに最善の戦略を用いる総合力の戦いと定義する。野中氏は政治を同じく負けないための体制を作ることと定義する。野球と政治に組織・人材・リーダー・戦略論という共通項があり、2人は異なる場所で戦っていながら「勝つため」「負けないため」という共通した意識で戦っていたのが分かる。その戦い方が「憎まれ役」というイメージに結びついているのだろう。加えて「リーダーの器以上に組織は育たない」「順調にきた男には想像力が足りない」等など仕事にも当てはまる名言もちりばめられ、ビジネスの指南書としても読める。私的には野中氏の小沢一郎との自・自・公連立の時の裏話が面白かった。自民・民主大連立の裏側もかくやと思えるほど。今の自民党に野中氏ほどの策士はいるのか。そしてあの時と同じ結末にならなければ良いがと心配になるほど、政治情勢的にもタイムリーな一冊。

安倍元首相の突然の辞任には驚いた。総理大臣という国の最高責任の職を辞める際に、後のことを考えずに放り出した無責任さに腹が立った。最高責任者不在のまま、自民党総裁選に浮かれる候補者の姿に唖然とした。政権与党には国を守るという意識はおろか、国民の生命・財産を守る意識すらない事実に愕然とした。だからこそ安倍政権は短期間で崩壊してしまったのだと納得させてくれるのが本書だ。政権発足時の高支持率でのスタートから数々の不祥事を経て突然の辞任に至るまでの1年間、安倍政権の内部では何が起きていたのかその内幕を詳細に描いている。あの時のあの対応の拙さの裏にはそんな事があったのかという驚きに満ちている。その余りの拙さぶりにはタイミングが最悪だったにしろ辞めて当然。もしも参院選に安倍自民党が勝っていたらと思うとゾッとした。安倍元首相の功績は自民党の本質を国民の前に曝してくれたことかも、と感じた一冊でした。

参院選での自民党大敗で政治が面白くなってきた。「選挙に行ってもどうせ変わらない」と思っていた人にとっては驚きの状況なのでは。図らずも「戦後レジームからの脱却」と言っていた安倍首相にとっては皮肉な結果となったが、与党と野党の逆転が有りうるという均衡した状況になって、国民の側に立った政治がなされるのではという期待が高まる。その鍵を握っているのが民主党(=小沢一郎)だが、本書を読むと小沢一郎がどのような日本の将来像を持って政権交代を目指そうとしているのかが分かる。しかしながら政権交代により官僚主導・財界重視の政治から、国民の生活重視の政治へ転換するという小沢一郎の真意は何処にある?という疑問が最後まで残るのは彼のイメージが強すぎるからなのか。ともあれ、これからの政治は与野党の対立でダイナミックに動くことを予想させてくれる1冊。

元検事、イトマン事件で許永中と共に逮捕され、現在は最高裁に上告中という著者の自叙伝。表と裏の両方の社会で活動してきた著者は「表社会と闇社会は見えない部分でつながっている」という。こうした話はまことしやかに聞くことではあるが、本書では実名と共に具体的にそうした事実が明らかにされていく。この本を読むと表に出てきた事件の裏側の仕組みが理解できる。元公安調査庁長官らによる朝鮮総連本部ビル売却事件や鹿児島県議選挙違反冤罪事件など、なぜ法律を遵守すべき側が法を犯すのか。そうした事件はなぜ問題の核心が明らかにされないままになってしまうのかも理解できる。ただし理解できたとしても、あまりの闇の深さに本書を読み終わった後には暗澹たる気持ちになってしまうのだが。とにかく凄い本であることに間違いの無い一冊。

次々と問題が明るみになっている社保庁と年金。自分の年金は大丈夫なのかと不安な人も多いはず。そんな不安を解消してくれそうな本を2冊紹介します。初めに複雑な年金の仕組みを分かりやすく説明してある「年金問題」で年金の仕組みを理解しましょう。「年金なんて貰えるかどうか判らない」という若い世代の人にお薦めします。そして年金がすでに支給されている人、支給が間近な人にお薦めなのが「支給もれ年金〜」。まずは社会保険事務所で年金の加入記録を確認しましょう。年金手帳の番号からインターネットでも確認できます。社保庁が信用できないだけに、支給されている年金、支給予定の年金が本当に正しいかどうか自分で確認する必要があります。それにしても年金問題でこれだけ国民は怒っているのに、税金の無駄遣いにはどうして鈍感なのか。税金も年金も国民が支払っているのに、国民のために正しく使われていないという点では同じはず。「あ〜、選挙が待ち遠しい」と感じている人が今年は多いのではないでしょうか。

官製談合・天下り・年金問題などはらわたの煮えくり返る事件が相次いでいる。国民の奉仕者である者が、税金を喰いものにしている現状にあまり鈍感なのに腹が立つ。他の国であれば暴動が起きるだろうとテレビでコメンテーターが言っていたが、おとなしい国民は税金を使う側から見ればいいカモなのだろう。次の選挙では国民の側に立った政党・政治家を選ばなければトンデモナイことになりそうな予感が…と前置きが長くなりましたが、今回紹介するのはそんな嫌な気分を吹き飛ばす落語の本。古今亭志ん生が亡くなって34年。志ん生の噺に登場する落語国の住人たちの人情・ユーモア・したたかさは、今の日本人が失ってしまったが故に聞き続けられているのだろうか。さて今夜も酒を飲みつつニュース番組をはしごして、志ん生を聴きなが眠ることにしよう。

借金苦による自殺・自己破産の増加が契機となり、2006年1月消費者金融のグレーゾーン金利の有効性を否定する判決を最高裁は下す。それを受け金融庁はグレーゾーン金利の廃止に向け動きだす。それは不景気の中でも莫大な利益を上げ続けていた消費者金融業界の死活問題ともなるものだった。政(政治家)・官(金融庁)・財(業界)三つ巴の攻防に加え、アメリカの影も見え隠れしつつ、2006年11月グレーゾーン金利の廃止と返済能力の調査を義務づけた貸金業法が衆議院で全員一致で可決する。その法案が成立するまでの300日間の攻防をルポしたのが本書。これほど役所が管轄する業界に打撃を与え、国民の側に立った法改正がなぜできたのか。新聞・テレビだけでは伝わらない、本で読んでこそよく分かるし面白いというお薦めの一冊です。

4月は新社会人、学生にとって新しいスタートの月。そして新しい出会いの月でもあります。今月紹介するのは出会いによって人生が変わったという感動の実話。著者はテレビ界で活躍している放送作家です。小学校4年生まで特殊学級にいました。5年生の春に転校した学校には特殊学級はありませんでした。そこで1人の先生と出会います。読み書きができなかった少年が学ぶ喜びを知り、卒業式には卒業生の代表として答辞を読むまでになります。用意されていた原稿を読まずに、自分の言葉で語り出したかっちゃんは…。生徒への愛情、教えることへの情熱、努力の大切さ、それらが奇跡を起こすという親子でぜひ読んでほしい一冊です。

先月は『いったい、この国はどうなってしまったのか』を紹介したが、その問いに対する答えともいえるのがこの小説だ。しかもエンターテインメントとしても抜群の面白さ。題材は自動車会社のリコール隠し。事件は組織が起こすものではなく、その組織に所属している個人が起こすのだという現実を小説ならではの手法を駆使して描いていく。自己の利益を優先するところから小さな綻びが生まれ、個々の思惑や組織内の力関係が絡み合いながら、その綻びは大きな亀裂となり組織そのものの存続を危うくする。人は綺麗事で割り切れるものではなく、ともすれば自己の利益を優先しがちになる。それが取り返しのつかない事態を招くことになっても、その状況を冷静に判断することは難しい。それらが人間の本質に根ざしているだけに、同じ過ちが繰り返されていく。傍から見ると「どうしてそんなバカなことを」と思えても、組織内の人間にとっては最善の方法と判断してしまうメカニズムを人間ドラマとして描いた本書は、いずれかの組織に属している読者にお勧めします。

耐震強度偽装から始まり、高校の未履修問題、原発データ改竄、タウンミーティングやらせ問題、政治と金(事務所費)の問題と、「美しい国」で起きるはずのない不祥事が続いている。まさに「この国はどうなってしまったのか」という本書のタイトル通り。これらに職業倫理と責任感の欠如が共通しているところに危うさを感じる。安全と信頼の面からより求められる職業でおきているだけに問題は深刻だ。それらを報道する側もまた例外ではなくなってきている。世の中で起きている重大なことが正確に伝えられていないのでは、と想像すると不安になる。そんな中でジャーナリストとしての矜持をもち、権力におもねることのない魚住・斉藤両氏の著作は常に刺激に満ちている。政治家に真っ先に求めることが景気の回復(つまりは金)である限り、国民は足元を見られ続け現状は変わらない。第一に政治家には公正さ、透明性、そして説明責任を求めることにより、国民は正しい選択が行える。そうなればこの国は「希望の持てる国」になるはずでは。そういうことを改めて教えてくれる一冊。

今年最初にお勧めするのは、家族でぜひ廻し読みしてほしい本です。著者は副題の通り小中学校ではいじめられっ子で、成績はオール1の落ちこぼれでした。18歳の時に両親と死別、24歳で定時制高校に入学、27歳で国立大学の理工学部に入学、現在は母校の教師という経歴から努力の人という姿が浮かびます。そのイメージの裏側には貧困・家庭内暴力・いじめ・無理解な教師、そして自殺未遂という過酷な経験があります。そんな著者を救ったのが、社会人になってからの人との出会いです。出会いから経験が生まれ。夢や目標が見えてきた。その目標に向かって努力したことで今の自分があると著者はいいます。大人がすべきことは、子どもたちに「未来の自分が待つ場所」を想像できる環境を作ること、そして子どもたちがそこに辿りつく努力ができるよう手助けすること。とはいえ大人自体が未来の自分の姿をイメージしにくい状況にあるわけで、「未来のきみが待つ場所」はぜひ親子で読んでほしい本としてお勧めします。

激辛な評論で敬遠され気味の佐高信、冷静かつ的確な現状分析と温厚な雰囲気でテレビの報道番組でお馴染みの岸井成格。ジャーナリストとして対照的な二人だが、慶応大学の1967年卒業の同期生でゼミも同じという旧知の仲。ちなみに同年の卒業生には小泉純一郎、小沢一郎もいたのだとか。大学を卒業して市民の立場から政治にかかわってきた佐高と毎日新聞の記者として政治の現場を取材してきた岸井。この政治的な立ち位置の異なる二人の対談は、ボクシングにたとえるとハードパンチ佐高とクレバー岸井の対戦といったところか。市民立場から戦後の政治の欺瞞性を暴く佐高と、政治の現場の論理と力学からそれを読み解く岸井。理想論の佐高に対し現実論の岸井という図式になるのだろうが、この二人の議論は常に対立しつつも噛み合わないまま終わるということがない。小泉政治の総括と、安倍政権の評価と今後についての議論はとくに読みどころ。参議院選挙を見据えるうえでも年末・年始にお薦めの一冊です。