セクシャルハラスメント(2)
今回は、前々回に引き続き、セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)の法律問題を取り上げます。

 当社ではセクハラ相談窓口を設けていますが、先日、ある女性社員からセクハラの苦情がありました。当社の社員数名が終業後飲みに行った際、酔った男性社員がこの女性社員に抱きついてキスをしたり、胸に触ったとのことです。この男性社員の法的責任はどうなりますか。また、当社はこの苦情に対し、どのように対応すればよいでしょうか。

 事実関係をもう少し詳しく調べる必要がありますが、この男性社員が女性社員の意思に反してこのような行為をしたのならば、この行為は刑法の強制わいせつ罪に該当し、6ヶ月以上7年以下の懲役に処せられます。また、民事上は不法行為に該当し、慰謝料等の損害賠償責任が生じます。
 もっとも、刑事責任であれ、民事責任であれ、行為の具体的態様、当事者の関係などを総合して、社会的に許容される範囲か否か(いわば悪質と言えるか否か)という観点から、違法性の有無が判断されます。

 社員からこのような苦情を受けた場合の御社の対応ですが、まず、早急に当事者、目撃者から詳細に事情聴取することは言うまでもありません。苦情を受けても迅速に対応しなかった結果、使用者側に配慮義務違反があるとして損害賠償責任が認められたケースがありますので、注意が必要です。
 事情聴取の結果、女性社員の言うとおり、セクハラ行為が明らかになった場合、この男性社員に対して懲戒処分をするかどうかが問題になります。
 懲戒相当か否か、懲戒相当としてもいかなる処分をすべきかは、
 1.当該行為の性質、態様、程度、
 2.当該社員の反省の有無、
 3.被害者の処罰感情、
 4.企業の業種・社会的地位、
 5.当該社員の職種・地位、
 6.他に処分例があればそれとの均衡などを考慮し、個別に判断することになるでしょう。
 その際、処分の相当性(過酷に過ぎないか)、手続の相当性(弁明の機会を与えているか)に注意すべきです。
 当該男性社員がセクハラ行為をしたのは今回が初めてであり、十分反省して被害者に謝罪し、被害者の処罰感情も和らいでいるようであれば、口頭注意や始末書の提出で足りるでしょう。
 逆に、当該社員がこれまで何度も同様のセクハラ行為を繰り返しており、会社からも再三注意をしてもまたやってしまったような場合は懲戒解雇という厳しい処分もありえます。

 次に、御社が被害を受けた女性社員に対し、法的責任を負うか検討します。
 会社は、従業員が「職務の執行につき」他人に損害を与えた場合に、使用者責任(民法715条)を負います。会社は、従業員が本来の職務の執行について損害を与えた場合ばかりでなく、職務との関連性のある行為についても使用者責任を負います。そこで、セクハラ行為と職務との関連性が問題になりますが、今までの判例では、職場内、就業時間内はもちろん、そうでない場合でも、職務上の地位(上司としての立場や権限)を利用した行為については、職務との関連性を認める傾向にあります。
 本件は終業後の酒席で事件が起きていますが、終業後であっても、実質的に職務の延長線上のものであれば職場に該当します。この点は、職務との関連性、参加者、参加が強制か任意かを考慮して判断することになるでしょう。
 本件が会社とは関係ない私的な飲み会であったとしても当該男性社員が被害を受けた女性社員の上司であり、その立場を利用してセクハラ行為を行ったと認められる場合には職務との関連性が認められ、会社が使用者責任を負うことになります。

 御社としては、今後、セクハラの再発を防止すべく、社内報等での周知・啓発、就業規則に規定をおく、研修等を実施するなどの努力が必要です。