未払い賃金
今回は株式会社が倒産した場合の未払賃金や退職金の行方について検討しましょう。

 私が勤務していた製材業の株式会社が倒産してしまいました。給料はこの3ヵ月ほど未払いですし、退職金も心配なのです。

 会社の倒産と未払賃金の問題はこの不況下ですから深刻な問題ですね。
 まず、確認しておきたいのですが、あなたが稼動していた株式会社は破産等の法的手続きをとっているのでしょうか。

 ええ、昨日会社の社長から従業員全員に説明があり、それによりますと、本日、裁判所に破産の申立を行なうとのことでした。

 そうですか、そうすると未払いの賃金等の処理は裁判所が選任する破産管財人の弁護士とのやりとりということになりますね。

 会社が倒産した場合、問題となる賃金等の債権は@未払賃金、A30日未満の予告期間しかなく解雇されたときは解雇予告手当(30日分の給料が予告手当となる)、B就業規則に基づき退職金請求権が発生するときは退職金、C社内預金等会社に預けている金銭などです。
 もうひとつ確認ですが、あなたが働いていた会社では退職金についての就業規則はどうなっていましたか。

 いやぁ、その点どうなっていたのかはっきりしません。何せ小規模の会社でしたから。早速ほかの従業員とも相談して確認してみます。

 おそらく、破産管財人も調査を行なうはずですが、あなたたち従業員も労働債権の発生根拠やその金額の裏付けとなる資料の収集、確保を行なったほうがいいでしょうね。例えば、就業規則(賃金、退職金規定)、労働契約書、給料明細書、賃金台帳、労働者名簿、離職票、解雇通知源泉徴収票、タイムカードなどです。

 破産手続きに入ると、未払賃金債権全額が一般の買掛金などより優先的に支払を受ける優先的破産債権になります。支給条件が就業規則で定められていれば、未払退職金も同じく優先債権になります。ところが、国税等や社会保険料に滞納がある場合、これらは現行法上賃金債権より優先し(この現行法上の規定には批判も多いのですが)、結局、破産管財人が努力して配当すべき金銭を集めても税金や社会保険料の支払をすると、未払いの賃金すら支払えないということもあるのです。私たちも破産管財人になって経験するのですが、税金や滞納している社会保険料すら支払えず、異時廃止と言って、破産手続きを途中で断念することもままみられるのです。

 そうすると、退職金どころか未払いの給料すらもらえなくなるかもしれないということでしょうか。

 それに備えて、未払賃金の立替払制度があります。この制度は、企業が倒産したため賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、一定範囲の未払賃金を労働福祉事業団が事業主に代わって支払う制度です。私も破産管財業務を行なった際に、この制度の利用を勧めたことがありましたよ。

 労働福祉事業団が立替払いをする金額は未払賃金総額の8割ですが、この未払賃金の総額には退職の時期と年齢により上限があるので注意する必要があります。しかし、優先債権とされる賃金債権が絵に画いた餅にならないようにするためにも、この制度の利用も考えるべきでしょう。この制度の説明書や請求手続き用紙は労働基準監督署にあります。