従業員の解雇
今回は会社の従業員の解雇について取り上げます。経営者の方には慎重な判断が求められるところです。
私は従業員40人の製造業を営む者ですが、最近の不況のあおりから従業員のリストラを考えています。どのような点に注意すればよいでしょうか。
解雇は労働者にとっては生活に関わる重大な問題なので、慎重に検討しなければなりません。一般的にこのような整理解雇は労働者側に落ち度のない場合になされるものですから、解雇に「やむを得ない事由」がある場合にのみ許容され、客観的事情のない場合には解雇権の濫用として無効となります。
判例では整理解雇の要件として「解雇の必要性」(企業に高度の経営危機があり企業維持、存続のために解雇が必要)、「解雇回避の努力」(解雇に先立ち配転、出向、一時帰休、早期退職者の募集その他の努力)、「人選の妥当性」(被解雇者選定基準が合理的で公正に適用されること)、「労働者との協議」(解雇の必要性や時期、規模、方法、選定基準などについて納得させるための協議)などが有効要件とされています。労働組合がある場合は十分な協議が必要で、それを経ないでなされた解雇は無効となります。
解雇有効要件が満たされた場合の解雇手続きとしては、少なくとも30日前に予告をするか、30日分以上の平均賃金の支払いをすることが必要です。退職金規定があれば、それに基づいて支給する必要もあります。
私は物販業を営むものですが、最近従業員が職場の同僚に頼んでタイムカードを押してもらい、就業時間の水増しをしたことが発覚しました。このような従業員を懲戒解雇できるでしょうか。
この問題は、私の事務所で研修中の司法修習生にも考えてもらいましょう。
はい、懲戒権は労働者の秩序違反行為に対する制裁罰という性質があり、罰刑法定主義、平等原則に反せず相当な場合には、適正手続きのもとに許され、本件も懲戒解雇が規律違反の種類・程度その他の事情に照らして相当なものと言えれば懲戒解雇できます。
内容はいいのですが、相談者の分かるように回答するのが実務です。
本件の場合、就業規則の内容などが明確ではありませんが、まずは就業時間の水増しが日常的に行なわれていたのか、どの程度の時間が水増しされていたのかなど、様々な事情を検討すべきです。解雇は労働者の生活に関わり、ことに懲戒解雇は単なる解雇に加え労働者の名誉・信用に関わるものです。また退職金の一部または全部が支給されないものなので、特に慎重に検討されなければなりません。懲戒解雇という処分が重すぎる場合には解雇権の濫用で無効となります。
懲戒処分としては一般的に@けん責・戒告A出勤停止B減給・降格C諭旨解雇D懲戒解雇などの処分がありますが、本件のように単に1度だけ水増しが行なわれていたような場合には、けん責、戒告などに留めるべきものでしょう。ただその水増しが日常的で長時間に渡っている場合には、懲戒解雇もやむを得ないといえる場合もあるでしょう。
懲戒解雇については「その者がなお改悛せず、その者を引き続き企業内に置くとさらに経営に重大な支障をもたらすことが明白」な場合にできると判断した判例があります。また懲戒解雇が認められた例としては長期の無断欠勤、横領、重大な経歴詐称、職場内暴力、業務命令違反などがありますが、いずれにしてもよく検討することが必要です。
成・富 解雇は従業員にとって重大な問題で、経営者にとっては微妙な判断を要するものです。判断を誤ると職場環境に支障をきたすばかりか会社の信用低下を招き、維持存続にも関わりかねません。行動に出る前に専門家のアドバイスを求めるとよいでしょう。