運転事故を起こした従業員の処分について

今回は、会社が所有する自動車を運転中に重大な人身事故を起こした場合の
従業員の懲戒処分等について考えてみます。

当社の従業員が社有車を運転しての営業中に重大な人身事故を起こしてしまいました。
  会社の信用問題もあり、相応の懲戒処分を考えているのですが、どのような点に留意して懲戒処分を行うべきでしょうか。
就業規則に会社の信用を失墜せしめた場合には懲戒処分の対象となる旨の根拠規程があれば、会社の従業員として会社の対面、社会的評価を低下させたものとして懲戒の対象になりますが、問題はどの程度の懲戒が相当かということですね。
  会社における業務内容、その従業員の会社内での立場、事故の経緯や事故の内容等を勘案して判断すべきことになりますね。
  ことに、最近、自治体などでは飲酒運転そのものでも即免職という規程が議論されていますが、飲酒運転や無免許運転により重大な人身事故を惹起した場合には、その飲酒運転、無免許運転そのものが非違行為であります。
  加えて、飲酒運転そのものに対しても社会的にも厳罰化の動きが顕著ですから、飲酒の上で死亡事故を惹起した場合には懲戒解雇も有効でしょうね。
懲戒の有無・程度に関しては企業の信用失墜という側面からだけではなく、当該従業員が受ける刑事処分との兼ね合いからも検討することが必要になるでしょうね。
  業務中における重大な人身事故の場合には業務上過失致死傷として当該従業員が刑事処分を受けることが想定されます。
  予想される刑事処分として罰金、禁錮、懲役が考えられますが、仮に、罰金刑ではなく、起訴されて正式裁判となって禁錮あるいは懲役刑が確定した場合には、確定した刑の面からも懲戒を考えるべきでしょう。
懲戒の問題と同じく会社も被害者に対して民事上の責任を負うのは当然なのですが、保険を使用した場合、保険料が上がるはずですが、この上がった分を従業員に請求できるでしょうか。
会社の民事上の賠償責任は使用者責任等の面(民法715条、自賠3条)からも免れることはできません。その場合、会社が契約している自動車保険で支払をすると保険料が上がるのが通常ですね。その値上がりした保険料分を従業員に請求することは消極に考えるべきでしょう。
  保険料が値上がりすることは会社が事業展開する上で社会通念上負うべき責任であり従業員に転嫁すべきではないと考えるべきでしょうね。
仮に、従業員が会社の車を運転していて自損事故を起こした場合に会社が車両保険に加入しておらず、保険からの補填を受けらない場合に従業員に損害を請求できるでしょうか。
恐らく、議論のあるところでしょうが、これも消極に考えるべきでしょうね。
  確かに、従業員の過失により自損事故を起こし会社に損害を与えたのであるから不法行為(民法709条)が成立するということも一方の主張としてはあり得るでしょう。
  しかし、会社と労働者という雇用関係はこの不法行為の一般原則を修正すると考えるべきでしょうね。類似の裁判例も会社の請求金額の4分の1を認容しただけでした。
  気をつけるべきことは会社が損害賠償請求できると一方的に考えて先ほどの保険料の上昇分や今の事例の損害分を勝手に賃金から引き去って相殺することは労働基準法上、許されることではありませんから十分留意してください。