建物賃貸借契約終了時における原状回復
弁護士 成田 毅 ・ 弁護士 富川泰志
今回は要介護施設に入所中の高齢者の年金を、その家族が勝手に費消している場合の対応策を取り上げます。
- Q 私は要介護施設の理事をしていますが、入所中の高齢者(以下、本人)の長男が本人の預金通帳や印鑑を管理していることをいいことに、本人の通帳に入金される年金を勝手に引き出して遊興費に使い、他方、施設への費用の支払いが滞りがちになっています。
- 施設としてどのような対応をとるべきか苦慮しています。
- 成 まず、ご本人にどの程度の判断能力があるかによって対応策が異なるものと思われます。
- 仮に、ご本人に判断能力がある場合には弁護士らとご本人の財産の管理について財産管理契約を締結する、従って、ご本人の長男から預金通帳や年金を取り上げる、その上で施設への費用の支払いを含めた財産管理を行うということが考えられます。また、弁護士らの専門家以外の社会福祉協議会の地域福祉権利擁護事業を活用することも可能かもしれません。
- 富 ご本人の判断能力が全くない場合には法定後見制度を利用し、後見人に財産管理を委ねることが考えられます。
- この場合、ご本人に判断能力がない場合ですから、ご本人が後見人選任の申立てをすることができませんので、原則として4親等内の親族(配偶者、兄弟、叔父・叔母、甥・姪、従兄弟)が後見人の選任申立てをすることになります。
- また、ご本人に判断能力がある程度残されている場合には、ご本人に保佐人の選任等の申立てを行ってもらい、保佐人に財産管理を行ってもらう方法もあります。
- Q 私が理事を務めている施設のほうでご本人の財産管理を行うことはできないのでしょうか。
- 成 考えなければいけないことは、施設とご本人との関係は利益が相反する関係になるということです。後日、ご本人の家族からクレームなどが出ることも予想すべきです。
- 施設とご本人との間で財産管理に関する契約を締結する場合には、その前提として施設できちんとした預金などの預り金取扱規定を作成し、その上で財産管理委託契約書を取り交わすことが必要です。
- また、施設がいわばお手盛り的にいい加減な運用をしているとの批判を避ける上からも、財産の管理状況についてご本人に定期的に報告し、さらには財産の管理状況を施設とは無関係の第三者にチェックしてもらうといったシステムも構築しておくべきではないかと思います。
- 富 平成18年4月1日に施行された高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律では、高齢者の財産の不当処分その他高齢者から不当に財産上の利益を得ることを経済的虐待と規定しています。換言すると、弱い高齢者から財産を不当に奪ったり費消したりといった立法事実が、今の世の中にいかに多いかを物語る条文になります。
- 施設はこのような経済的虐待を含めた虐待の事実を発見したときは、前記高齢者虐待防止法の21条1項に基づき市町村の窓口に虐待の事実を通報しなければならないのです。
- 高齢者の金銭管理を含めた問題はこれから一層生じるものと思われますが、施設も預り金の取扱規定を策定しておくなど問題発生への対処方について対応できる体制をとっておくことが必要ですね。
