交通事故による車両損害について
法律相談 弁護士 成田 毅 ・ 弁護士 富川泰志
今回は交通事故による車両の修理費用と車両の時価額との関係、いわゆる評価損
(格落ち)について検討しましょう。
- Q 先月、車を運転し、信号待ちをしている時に、携帯電話のメールに気をとられていた車両に追突されてしまい、私の車が損傷しました。
- 修理費用は50万円ほどかかるのですが、相手車が契約していた自動車保険会社の担当者が言うには、私の車は新車登録から5年以上経過しており、時価額が30万円程度だから、車両損害に関する賠償額は30万円が限度だというのです。
- 追突されて、迷惑を掛けられたうえに30万円しか出せませんというのは釈然としないのですが。
- 成 あなたにはご不満の残る回答になるかもしれませんが、これは基本的には自動車保険会社の担当者の指摘を原則と考えるべきでしょうね。
- 物理的に修理が可能でも車両の修理額が当該車両の事故当時の時価額を上回る場合には、損害額は原則として時価額に限定されるというのが、これまでの裁判例の扱いです。
- 損傷が激しく物理的に修理が不可能な場合の損害額は車両時価額を基準としますが、この物理的に修理不能の場合を考えれば時価額を限度とするとの裁判所での扱いも理解いただけると思います。
- 富 ひとつ付け加えておきますと、原則は今の話のとおりですが、あなたのご質問の場合に、時価額に買換えに要する諸費用を加算して賠償額を算出した裁判例もあります。
- 私たち弁護士が同様の問題で簡易裁判所での調停に臨む際などにも時価額に買換え諸費用を加算して解決を図ることもありますので、保険会社との話し合いに際しては、時価額に買換え諸費用を加算できないかとのお話しをしてみてはいかがでしょうか。
- Q 車の物損の関係でもうひとつお聞きしたいのですが、今回の私の車のように初年度登録から5年以上経過した車両ではなく、初年度登録から1年未満の新車である場合に、修理費用だけではなくいわゆる格落ちを請求することは可能なのでしょうか。
- 成 ご質問は、事故歴があることにより車の商品価値の下落が見込まれる場合の評価損の賠償を求めることができるか、仮に、求めることができたとしてその金額はどの程度かという問題です。
- 評価損を認めるか否かに関しては、事故当時、当該車両を近い将来売却するなどの予定があり、価値の下落が現実化する蓋然性があったかどうかにより、その蓋然性がなければ否定する、蓋然性があれば認めるとの両者の裁判例があり、私達弁護士も悩むことがあります。
- 私のこれまでの裁判、調停での経験あるいは示談交渉の行い方をお話ししますと、前記の売却等による評価損の現実化を問うことなく、初年度登録からの期間(新しければより評価損を認めやすい)、走行距離、損傷の部位(車両の機能や概観に顕在的または潜在的損傷が認められるのか)、車両の価値(高級車かどうか)、車両の希少性などを念頭に評価損が発生するかどうかを検討すべきと考えており、裁判例もこのような立場から評価損を認めたものが多数あります。
- 富 問題は、評価損を認めるとしてその金額がどの程度であるかでしょう。
- 裁判例ではこの点について一定の傾向が認められ、修理に要する金額を基準として10%〜30%を評価損額としている裁判例が近時多数を占めているといってよいでしょうね。
- 評価損を認めるかどうか、認めるとしてどの程度の金額が相当かに関する紛争もよくみられ、調停あるいは少額訴訟で解決のはかられることもありますが、調停、少額訴訟でもこれまでお話ししたような内容で解決されているのが多いといえるでしょう。
