行政対象暴力について
法律相談 弁護士 成田 毅 ・ 弁護士 富川泰志
今回は、行政に従事する職員に対し、暴行・脅迫・困惑行為等の違法または不当な手段を用いて、自己もしくは第三者の利益をはかるような働きかけ行為に対する対処方を検討します。
- Q 私は、自治体の総務担当者ですが、政治団体を標榜する団体から機関紙の購読を要求されています。
- この要求には内容証明郵便で不要である旨断り、その後、特段の嫌がらせ等はないのですが、近時、問題となっている行政対象暴力の実態やそれに対する対処方についてご相談に来ました。
- 成 平成15年に日弁連民事介入暴力対策委員会、警察庁、全国暴追センターの共同で、全国の都道府県、市ならびに特別区の合計745の自治体の総務・福祉・公共事業・環境担当の各部局にアンケート調査を行いました。
- その結果、全国の30・5%の自治体から暴力団、暴力団が関与するフロント企業、政治団体標榜ゴロ、社会運動標榜ゴロ等の反社会的勢力から違法・不当な要求を受けたとの回答がありました。
- その被害の具体的な内容としては、物品購入23%、機関紙の購読22・7%、公共工事の受注業者に対する行政指導14・6%、許認可等の決定13・6%、公共工事の入札・下請への便宜12・6%、生活保護等の給付金の支給10・8%という結果でした。
- おそらく30・5%という数字は控え目な数字で、実態は水面下でより多くの行政対象暴力による被害があるのではないかと推測されます。
- 富 行政担当の職員の基本的な心構えは1.行政職員としてのあなたの判断に基づいた意見を述べることができる対等な関係を築くということが一番重要になります。
- 相手方の威圧的な言動に押し切られて担当職員の意見が述べられない状況はまさに対等な関係が崩れてしまったことになります。
- 次いで2.相手を恐れない、しかし、あなどらないことを心掛けるべきです。不当要求行為を行う者らは、言葉尻を捉えたり、曖昧な態度につけ込むことを言わば商売にしているわけですから、挑発にも乗らず、しかし、挑発もしない毅然とした態度が必要ということです。
- 3.一人で抱え込まないということを大事にしてください。担当者一人を孤立させないで、関係部署全員で協力して事務処理に当たるという組織作りを心掛けてください。
- 私ら弁護士の経験から言えることですが、もう一つ重要な点は4.ミスを隠さないということです。ミスがあったときは率直に認める姿勢も重要です。ミスを隠そうとすればするほど弱みにつけ込まれ、ミスを隠そうとした隠蔽工作がさらにつけ込まれる材料になりかねません。
- また5.相手の土俵には乗らないことが大切です。端的に言えば、交渉場所はこちら側の支配領域で行うこと、より言えば、闇の要求には明るいところで話をつけることが解決の基本姿勢になります。
- 成・富 具体的な対応のポイントは1.相手の確認(名刺、メモ、録音、相手の車両番号の確認等)2.あなどらないの裏返しですが、誠実な対応の姿勢3.ていねいな言葉遣い(「あなたの申出には応ずることはできません」が正し言い方で、「あんたみたいな人の話には…」は不可)4.根負けして安易かつ合理的な理由のない妥協はしない5.複数の職員で対応等、このようなことを具体的な場面では心掛けてほしいと思います。
- 旭川にも行政対象暴力を含めた民事介入暴力を担当する弁護士がいますし、警察や暴追センター等の相談窓口がありますので、各行政機関の担当者だけでは処理しきれないと考えられるときにはこのような外部機関に速やかに相談することも大切です。
