犯罪被害者支援

こんな時どうする 法律相談

【2008年2月号】 弁護士 成田毅・富川泰志

犯罪被害者支援

犯罪被害者の支援に関する犯罪被害者等基本法が平成17年に施行され、同19年には被害者が刑事裁判に直接参加する被害者参加制度が制定されました。ようやく、これまで置き去りにされてきたともいうべき犯罪被害者支援のための制度が動き始めました。今回は、犯罪被害者支援に関する施策を概観し、次回以降では、より具体的ないくつかの制度を検討してみます。

Q 裁判員制度が導入されると種々報道されていますが、これと並行するように犯罪被害者への支援も様変わりしつつあるようですが、どのよう面で犯罪被害者支援が図られるのでしょうか。

成 平成16年に犯罪被害者等基本法が制定され、この法律に基づき、内閣府に設置された推進会議、法制審議会等が中心となり、具体的な施策が決定され、平成20年に入り、これら具体的な施策が徐々に動き始めてくるようになります。

犯罪を犯した被疑者・被告人の人権保障だけではなく、私に言わせれば、被害者の権利保障・処遇への第一歩がようやく始まったというのが実感です。真の人権保障は、まず、被害者の人権・権利が保障されてこそ地に根を張ったものとなるはずです。

被害者支援への施策・制度そのものはできつつあるものの、その具体的運用は、弁護士、裁判官、検察官ら法曹三者だけでできるものではなく、警察、行政機関、医師、民間諸団体等との協調や相互理解が不可欠となるものと思っています。

富 具体的施策としては@犯罪被害者等が直接刑事裁判に参加する制度である被害者参加制度A刑事裁判言渡し後に、刑事裁判と同じ裁判体が民事裁判を行う損害賠償命令制度B刑事記録閲覧・謄写の範囲の拡大C法廷等において被害者の個人情報を明らかにしない制度の法律上の明文化D刑事裁判への犯罪被害者参加制度導入にともない、資力の乏しい被害者参加人に公費により弁護人を選任する制度E犯罪被害者給付制度の見直しなどがその骨子となります。

これらの施策が徐々に運用されていくわけですが、それぞれの施策策定には紆余曲折があり、今後の具体的運用では、制度そのものの限界、問題点が明らかになり、改善を要するものもでてくるのではないかと思われます。

成・富 例えば、被害者に対する経済的援助について、犯罪被害者給付制度の拡充を紹介しましたが、この制度により支給を受けられる犯罪そのものが限定的です。

対象となる犯罪は、人の生命又は身体を害する罪に当たる行為による死亡、重傷病又は障害とされていますから、「故意犯」が対象であり、従来の支給制度と同じく、交通事故などで亡くなったご遺族は支給対象ではありませんし、強姦、強制わいせつ等の性犯罪の被害者も支給対象ではありません。

では、何が、拡充されたのか、なのですが、従来、遺族給付金の例ですと、最高額が1573万円で最低額が320万円であったところ、現在の議論では自賠責保険並みに上限を3000万円にしようというものであり、後遺障害(1級から14級)については、従来、最高1849万円で最低18万円であったものが、同じく、自賠責並みの最高4000万円に引き上げるという検討が行われています。

突然、夫が、妻が通り魔に殺害された、そのご遺族への給付金の最高額が自賠責と同様に3000万円であるということの是非は今後の課題となるでしょうし、恒久的なものとはなってほしくないと願っています。

冒頭に犯罪被害者の権利保障の第一歩と述べましたが、制度ができても、これを生きた制度として運用するのが弁護士の責務でしょうし、制度そのものの問題点を指摘することも弁護士の責務だと考えています。より言えば、犯罪被害者支援への国民的な理解が得られなければ制度そのものが画餅に帰しかねないのです。