旭川から発信する情報コンテナ月刊北海道経済
月刊北海道経済は創刊以来40年。旭川市を中心とする道北地域の政治・経済・文化の話題を発信している雑誌です。
Q 前回に続いて、より具体的に被害者参加制度、損害賠償命令制度について教えていただけますか。
成 平成19年6月に成立した刑事訴訟法改正により犯罪被害者が刑事裁判に直接関与する被害者参加制度が制定されました。平成12年に成立した犯罪被害者保護に関する法律では「意見陳述」という形で被害感情を法廷で意見表明するにすぎなかったものが、かなり突っ込んだ形で被告人の刑事裁判に関与できるようになりました。この被害者参加制度は今年の秋ころを目処に施行される予定であり、裁判員制度に先行して行われる刑事裁判の大きな変容といっても過言ではない制度となるでしょう。
富 刑事裁判に参加できる被害者参加人は、故意により人を死傷させた罪、強制わいせつ強姦の罪、業務上過失致死傷の罪、逮捕監禁並びに略取、誘拐及び人身売買の罪の被害者及び遺族若しくはその法定代理人とされています。弁護士が代理人として参加することも可能であり、つい先般、被告人の国選弁護制度と対応する形で、資力の乏しい被害者のために公費で犯罪被害者の弁護士費用をまかなう被害者国選弁護人の制度(名称は確定していません)の立法に向けての閣議決定がなされ、国会での審議となることが確実となりました。
成 刑事裁判に参加する被害者は(弁護士に委任した場合には弁護士とともに)、傍聴席ではなく、法廷内に在廷する権利、証人に対して情状面で尋問を行う権利(但し、尋問権には行使するためのいくつかの要件があります)、被告人に対して意見陳述に必要な範囲で質問することができる被告人質問権を行使できます。被告人への質問権は証人への尋問と異なり情状に関する事実だけではなく、事実に関する質問も可能です。
さらには、被害者は法廷で事実及び法律上の意見を述べる弁論としての意見陳述に加え、従来、検察官のみが独占してきた求刑意見も一定の要件のもとで述べることができます。被害者国選弁護人制度の導入が必至でしょうし、また、ぜひ実現すべきでしょうから、従来、被告人の弁護人と検察官が対峙していた法廷が、検察官の隣に被害者及びその弁護人が同席する構図となることを想定すれば、裁判員制度と並んだ大きな刑事司法の変容がお分かりいただけると思います。
富 犯罪被害者の刑事裁判参加と同時に平成19年6月「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続きに付随する措置に関する法律」が改正され、刑事手続きと民事手続きを有機的に連携した損害賠償命令制度が制定されました。これまでは、民事裁判と刑事裁判が別の手続きで行われ、民事上の損害賠償請求は刑事裁判とは別に新たな訴訟を提起する必要があったのですが、今回の改正法は、刑事手続きと民事手続きの分離という原則を維持しつつ刑事裁判の判決言渡し後に判決を言渡した裁判所がそのまま民事の審理を行うことによりそのまま、事実上刑事裁判の事実認定の心証が引き継がれることを可能にして、被害者の立証の負担を軽減し、簡易迅速な被害の回復を目指している点に特徴があります。
損害賠償命令制度の対象事件は、被害者参加制度と異なり業務上過失致死傷事件が対象になっていないことに注意が必要です。審理は、申立を書面で行い、最大で4回以内の審理で、「決定」という形で言渡されることになります。
このように賠償命令制度が改正され、被害者保護の一翼を担うことが期待されるものの、加害者に資力がなければ、結局、賠償の決定も絵に描いた餅にすぎず、前回私たちが指摘したように、犯罪被害者給付制度の拡充が望まれるゆえんであることを指摘しておく必要があると思っています。