北海道経済 今月の視点【2003年05月号】安閑としてられないJRタワーの開業

今月視点

【2003年05月号】 西田 勲

安閑としてられないJRタワーの開業

JR札幌駅南口に大型商業施設『JRタワー』がオープンして1カ月余りが過ぎた。大丸札幌店、北海道初登場のショップも多数入店したショッピングモール、道内最大の書店、松竹・東宝・東映3社共同運営のシネコンなど話題性が多く、開業1カ月で来場者は614万人を越えた。JR札幌駅の乗降客数も前年と比べて12%伸びている。

大丸のこの1カ月の売上高は40億円を超え、外商を除いた店頭ベースでは老舗丸井に次ぐ数字となっている。「JRタワーの経済効果は年間900億円」との景気の良い試算も出されており、まずは順風満帆の船出といったところだ。

ところで、JRタワーの快進撃で札幌の一極集中がさらに進むとの危惧が地方都市から聞こえてくる。

すでに札幌には、北海道全体の人口の32%、185万人が集まり、商品販売額ではその51%、預金・貸し出しでも53%と、人・物・金の集中が極端に進んでいる。長引く景気低迷で旭川や函館、釧路などの地方都市では支店や営業所などの撤退が相次いでいるが、そうした経済情勢は人、物、金の札幌への移動をさらに加速させており、また未曾有の就職難から、生まれ育った地方都市を離れ札幌へ出る若者が増加し続けている。話題性豊かな巨大なショッピングゾーンJRタワーは、それでなくても落ち込んでいる地方都市の消費―購買力をさらに札幌へ吸収してしまうというのである。

平和通買物公園の商店主の中には「地方都市の中ではJRで直結、1時間20分で行ける旭川が最も大きな影響を受ける」と強い危機感を口にする人も少なくない。

また一方では、JRタワーをマイカル小樽の二の舞になるのではないかとの悲観的な予測もある。華々しく開業したマイカル小樽は、当初こそ話題性で人を集めたが、間もなく買物客の足は遠のき破綻した。JR札幌駅という好立地だけにマイカル小樽のようなことはないと思うが、移ろいやすく捕らえどころのない消費者心理を読み間違えれば、立地条件やスケールだけでは生き残れないのである。

好調がこれからも続くのか、開業時の一過性のフィーバーに過ぎないのかは分からないが、どちらにしても、ここしばらくの間はJRタワーが経済界の話題の中心となりそうである。

旭川などの地方都市も手をこまねいているわけにはいかない。今のところ旭川への影響は比較的少ないようだが、若者の衣料関係の売り上げが10%程度減少しているという。札幌に対抗できる魅力的な商店街づくり、話題づくりに本腰を入れなければならないだろう。

この4月に平和通商店街振興組合が買物公園活性化を目指す新会社『旭川まちづくり株式会社』を立ち上げる。現在5条買物公園で建設が進むマンションの1、2階部分を買い取り、来年夏に集客施設を開設する方針だ。

函館で一足早く同種の事業が実施されており、設立された『はこだてティオムオー』が、商売を始めたいという若者に空き店舗を開放することで大門商店街の活性化を図ろうと試みている。徐々に買物客回復の効果は現れているそうだ。

旭川まちづくり株式会社の狙いが成功するかどうか、未知数も多いが、チャレンジ精神は評価したいし、期待して見守っていきたい。商店街だけでできることではないので、行政や経済界も支援し、買物客を回復し、少しでも若者が残る魅力的な街づくりに努めてもらいたいものである。