旭川から発信する情報コンテナ月刊北海道経済
月刊北海道経済は創刊以来40年。旭川市を中心とする道北地域の政治・経済・文化の話題を発信している雑誌です。
年間の自殺者が3万人を超えている。とくに借金や失業などを苦にした自殺者が急増、その数は6000人に達しさらに増えつつあるという。また捜索願が出された家出人も約9万人を数え、傾向としては、50代の自営業者が占める割合が大きいのだそうである。これらの数字は、15年も続く長期不況下で中小の自営業者が経済的にも精神的にも絶望的な状況に追い込まれていることを示している。
ゴールデンウイーク明けに神居古潭で、洋服の大元の堀口社長夫婦が入水自殺した。奥さんの病気も一因のようだが、やはり業績不振から経営していた会社が昨年倒産したことで精神的に落ち込んでいたようである。堀口さんは職人気質の人で、仕立ての腕も良かった。「これは堀口さんにつくってもらったスーツだ」と、夫婦の入水自殺後わざわざ神居古潭を訪ね、手を合わせる大元のお得意さんも少なくないそうである。そんな風に技術と人柄が慕われた経営者が、最後は自殺という道を選ばなければならなかったのは悲劇である。
今の経済情勢では、中小の自営業者が自分の能力や努力で会社の窮状を打開しようとしても限界がある。最悪、経営している会社や店が破綻に追い込まれてもだれも責めはしない。実際、旭川でも昨年から今年にかけて地場を代表する企業の破綻が続いたが、経営責任を追及する声は小さく破綻した会社の社長さんたちは以前と変わらない生活を送っている。堀口さんの場合は負債といっても、大手の破綻と比べれば微々たる額であり、もう少し図太く生きていってもらいたかったと思う。
日本経済がここまで危機的状況に陥ってしまった原因はいくつかあるだろうが、一つには今、公的資金導入でやっと息をついでいる金融機関が自ら撒いた種であるとも言える。
バブル期、金融機関は肝心の経営計画は二の次にし、土地と建物を担保にどんどん金を貸しまくった。土地の価格は上がり続けるものとの神話をだれも疑わなかったし、国や地方自治体の固定資産税徴収額もどんどん膨らんでいく前提で予算が組まれていた。私も、遊休地にビルを建てることを勧められ、いくらでも融資しますよと誘われたものである。幸いそういった話には一切乗らなかったので、今は余計な心配をしないですんでいる。
もともと私は銀行の金の貸し方に疑問を抱いていた。それは、法人が金を借りる場合、必ずといってよいほど、代表者個人の保証をとることである。住宅など個人財産が担保として押さえられることが多いのである。
実はそうしたやり方は「遡及型融資」といってアメリカなどでは州によって違法とされている。つまり、法人が破綻しても個人の財産はある程度守られるべきとの考え方である。だから経営に失敗しても、何度か再起を図るチャンスが与えられる。
これに対して一度事業に失敗すると住宅も何もかも失ってしまう日本では、余程でない限り再起のチャンスはなく、前途を悲観して自殺してしまうといった悲劇が起きるのである。堀口さん夫婦はこうした日本の融資制度の犠牲者ともいえるのである。
日本の悪しき商い習慣の連帯保証人制度は見直すべきである。金融機関は、土地建物や個人の財産を担保にするのではなく、その会社の経営本体、将来性をしっかりと見つめ融資の是非を決定すべきである。連帯保証人制度は世界標準に反しているのである。