旭川から発信する情報コンテナ月刊北海道経済
月刊北海道経済は創刊以来40年。旭川市を中心とする道北地域の政治・経済・文化の話題を発信している雑誌です。
7月7日七夕の日に、音楽の街にふさわしいコンサートが旭川市民文化会館で開かれた。世界の若手音楽家の育成を目的として故レナード・バーンスタイン氏が提唱し90年から開催されているPMF(パシフイック・ミュージック・フェスティバル)である。
これまでは札幌市中心で開かれていたが、14回目となる今年はより多くの音楽ファンに楽しんでもらおうと、東京都、大阪府、青森市、そして札幌以外の道内6市町村でも日程が組まれた。
5日に札幌のKitaraで開幕し、次いで旭川開催となったもので、世界最高の指揮者と呼び声が高いベルナルト・ハイティンク氏、そして厳しいオーディションを経て世界中から選ばれた若手の音楽家総勢117人が来旭した。
実は私がこのコンサートの実行委員長を仰せつかった。非常に名誉なことではあるが、正直言って最初に話を聞かされたときは気が重たかった。これまでにも何度か旭川で開催したいとの申し入れがあったのだが、その時々の音楽関係者は「旭川での開催は無理ではないか」との判断で実現しなかった。音楽の街を標榜(ひょうぼう)しながらも、クラシックコンサートとなると市民の反応は今ひとつで聴衆が少ないのが実情。最高レベルのコンサートを開いても聴衆は集まらず興行的にも赤字となると憂慮したためである。
ところが今年は、私が会長を務める旭川音楽振興会に要請があり、クラシック音楽の普及のためにリスク覚悟で引き受けることとなった。引き受けたからには何とか成功させようと、音楽振興会のメンバーの努力でチケットは予定通りさばけた。ただ、当日果たして文化会館大ホールが市民で埋まるのかとの不安は拭(ぬぐ)えなかったというのが正直なところだった。
しかしそんな考えは取り越し苦労だった。7日夜、文化会館大ホールは満席で、聴衆の期待に応え、演奏も熱く感動的なものだった。クラシックの中でも極めて演奏が難しいとされるマーラーの『交響曲第九番』が見事に披露され、聴衆からはブラボー歓声と惜しみない拍手がいつまでも続いた。この夜、会場に足を運んだ市民にとって感動的な忘れられない一夜となったと思う。
「音楽の街」と言われて久しい旭川だが、実際には合唱と吹奏楽は層が厚く全国的にも高いレベルにあるが、ほかの分野は必ずしも盛んなわけではない。とくにクラシックは、奏者も聴衆も少なく、北海道第二の都市にしては振るわないのが実情である。しかし、今回のPMFで示した市民の感動を目の当たりにして、旭川はクラシック嫌いの土壌なわけではなく、良質なクラシック音楽に接する機会がこれまで少なかったのではないかというのが率直な気持だ。
市内の経済人や学生が実行委員会をつくり5年前から続いている『旭川・ウイーン弦楽セミナー』、クラシック部門の新人を発掘する『新人音楽祭』、昨年始まった『中田喜直記念コンクール』などの“クラシック音楽を旭川でも育てよう”との試みが少しずつ実を結びつつあるとも言えるのだろう。
PMF開会式であいさつに立ったウイーンフィル首席奏者のペーター・シュミードル氏は「高価な自動車やイブニングドレス、豪勢な食事よりも、音楽こそがわれわれの心や魂を癒し豊かにしてくれる」と語っている。音楽は市民の心を、そして街を豊かにするのである。
合唱、吹奏楽に偏らず、幅広く音楽を楽しむ市民が増えることが、本当の意味で『音楽の街旭川』となるのだと思う。