北海道経済 今月の視点【2005年01月号】心温まる話から教わるもの

今月視点

【2005年01月号】 西田 勲

心温まる話から教わるもの

昨年暮れ、ロータリークラブの例会で、旭川パレスホテルの相原米夫総支配人が大変印象に残る体験談を話された。

それは5年ほど前、イチローで有名なシアトルに出張した時の話で、相原さんは娘さんのお土産にバッグを買おうとデパートへ行ったのだそうである。ところが残念ながら買おうと思っていたメーカーの品がなかった。その時、黒人の店員が「何をお探しですか」と笑顔で尋ねてきた。そこで「希望のバッグが見つからない」と説明すると、デパート中くまなく歩いて探してくれたのだそうである。結局バッグはなかった。普通はここで「当デパートには置いておりません」と丁寧に頭を下げられて終わりだが、その店員は相原さんをデパートから2ブロック離れたビルへと案内し、「この3階にあなたの買いたいメーカーのショップがあります」と紹介してくれたのである。

親切この上ない接客に感嘆した相原さんが「いつもこのようなサービスをするのか?」と質問すると、「お客さまの希望をかなえることが私どもの使命です。ここシアトルは有名観光地であり、アメリカの中で住みたい都市ベスト3に入ります。そうした街のイメージを壊したくないのです」という答えが返ってきたそうである。

相原さんは、「私自身、外資系のホテルマンとして常日頃最高のサービスに努めていると自負していますが、私より若いデパートの店員がここまでグローバルな考えを持っていることに感動しました。後日、妻の香水もそのデパートに足を運んで買い求めました。香水はとくに買うつもりはなかったのですが、店員の接客に対する感動が私の財布のヒモを緩めたことは確かです。あれこそ商売の原点ではないでしょうか。機会があればまた、シアトルに行ってあのデパートで買い物をしたいと考えています」と、話を締めくくった。

この話で私が最も感心したのは、デパート店員の街を愛する心である。プロの販売員として「お客様に満足してもらいたい」という気持ちと同時に「シアトルを訪れる人に“この街は素敵だ”と好印象を抱いて帰ってほしい」との強い思いをしっかり持っているのである。

ロータリーの例会と前後して、買物公園活性化を探るパネルディスカッションが旭川大学後援会の主催で開かれた。「このままでは中心市街地は危ない!」とサブタイトルがつけられたこの催しでは、「空き店舗の賃料を安くして若者に出店チャンスを与えて」「イベントをもっと増やすべきだ」「母親が買物しやすくするために託児所を設けて」「公園の路盤を滑らないように改善して」といった具体的な意見が出された。聞いていて私もなるほどと参考になることが多かったが、しかし一方で、ハード優先の提案が相変わらず多いなとも感じた。

夜7時を過ぎると買物公園の店舗は軒並みシャッターを下ろしてしまう。人通りは途絶え、街路灯やイルミネーションだけが立派に整備された路面をむなしく映し出す。そうした光景は観光客の目にどう映るのだろうか。買物公園に、そして旭川に対する印象は決していいものではないと思う。ハードだけ整備しても買物公園の再生はありえないのである。

まずは商店主たちが、ここは日本で最初の歩行者天国であるとの誇りと自覚を持つべきである。シアトルの街を愛し、真心で接客しているシアトルのデパート店員のように買物公園を訪れる人に接していくことができれば、その積み重ねが買物公園再生につながっていくと思う。自分の店のことだけでなく、買物公園全体が良くなるための努力。相原さんがデパート店員のサービスで感じたように、それが商売の原点でもある。