北海道経済 今月の視点【2005年02月号】「冬ソナ」で証明された文化交流の力

今月視点

【2005年02月号】 西田 勲

「冬ソナ」で証明された文化交流の力

私の息子が台湾の女性と結婚していることもあって、何度か台湾を訪れたことがある。戦前、朝鮮や中国と同じく植民地として日本の統治下にあった国だが、親日派が多いのが印象に残った。息子の結婚式に出席したときも、私たち夫婦を向こうの方々は心から歓待してくれた。そして今、北海道観光ブームということで、チャーター便でたくさんの台湾の旅行者が旭川空港に降り立つ。私にとって台湾は、もっとも親しみ深い外国である。

その台湾の李登輝前総統が師走に来日した。政界を引退してなお、独立派のシンボル的存在である李氏の来日を認めるなら「報復処置をとることもある」と中国政府が強く抗議けん制する情勢下での家族を伴っての訪日。日中関係がさらに悪化しかけないとの危惧から、政府は政治家の接触や報道取材の自粛を求めピリピリ緊張した空気の中で、李氏は名古屋、金沢、京都、琵琶湖などを観光して回った。幸い大きなトラブルもなく、李氏は1月2日に関西国際空港から帰国の途についた。

それにしても、今回の過敏な中国の反応に違和感を持った人は少なくないと思う。引退した政治家が私人として主要な観光地を巡るというのが旅の目的なのである。「報復措置」を持ち出すほどのことはないと思うが、それだけ、日本と中国の関係が冷え込んでいるという証(あかし)といえるのかもしれない。

「政冷、経熱」といわれる現在の日中関係。経済交流はますます盛んである。経済成長が続き、世界一の消費大国に成長しつつある中国の市場は魅力的で、日本経済の長期低迷からの脱却もこの国がキーとなる。これからも日本企業の中国進出は続き、経済に関しては両国の国境はないに等しい時代を迎えるといわれている。半面、政治関係は悪化の一途をたどっている。尖閣諸島の帰属問題、東シナ海油田開発、中国原潜の領海侵犯。昨年中国で開催されたサッカーアジアカップでの中国人サポーター暴徒化は、今なお反日感情が根強いことを示した。現に「日本に親しみを感じる6.3%、感じない人53・6%」という中国の世論調査もある。そして毎年争論が沸き起こる靖国参拝問題。胡錦涛主席から強く中止を求められ小泉首相もさすがに今回は断念したが、根深いこの問題は相変わらず日中関係のアキレス腱である。

いくつもの難しい問題が両国の間に横たわっていて前途は多難を極めるが、もう一つの隣国韓国との関係に、日中の政治的な難問解決のキーがあるのではないかと思うがどうだろうか。

日本と韓国も、教科書問題、慰安婦問題など長くギクシャクした関係が続いた。反日感情も中国に劣らず強かった。それが最近は一変した感がある。「冬のソナタ」に端を発した韓流ブームで日本人の韓国文化への関心が高まり、向こうの人も日本のアニメーションやポップスに理解と興味を募らせている。「一時的な熱狂だ」とクールな見方もあるが、私は文化交流の力は偉大であり、その国の大衆文化を理解することがすなわち相互理解であり、難問解決の糸口だと考える。冬ソナの主題歌「最初から今まで」を歌ったリュウさんは、旭川出身の玉置浩二さんに憧れて歌手を志したという。日韓国交回復から40年。さまざまなトラブルはあったが、お互いに理解しあえる機運が一段と高まったともいえる。

日中関係も、政治的な解決を優先するのではなく、文化交流にもっと力を入れるべきである。その意味で中国版「冬のソナタ」の出現を期待したい。