旭川から発信する情報コンテナ月刊北海道経済
月刊北海道経済は創刊以来40年。旭川市を中心とする道北地域の政治・経済・文化の話題を発信している雑誌です。
アスベスト(石綿)の吸引による健康被害が次々と明らかになり、新たな公害問題としてクローズアップされている。労災認定された死亡者が全国で約500人を数え、道内でも18人が亡くなっており、旭川でも北野組の従業員が1人死亡している。
天然の繊維状鉱物であるアスベストは熱に強く電気を通さない、摩擦にも強く、また酸やアルカリにも冒されにくい。そうした特性は古代から知られ、ミイラを包む材料にも使われたのだそうである。名前自体、ギリシア語で「不滅なもの」という意味である。耐久性、断熱性に優れているので近代になってからはますます用途が広がった。一番は今問題になっている建築資材だが、クルマのブレーキパッド、水道管、たばこのフィルター、化粧品の原料、またヘアードライヤーやトースターなどなど3000種類もの製品に使われている。まさに日常生活に溶け込んでいるのである。
髪の毛の太さの5000分の1という極細の繊維で、しかも綿のように軽いので空気中に漂う。それを人が吸い込むと肺の奥まで入り込み、がんの一種「悪性中皮腫(あくせいちゅうひしゅ)」を起こしたり、肺がんのもとになる。発病までに平均40年という時間がかかるといわれ「静かな時限爆弾」と呼ばれ、被害はこれからさらに全国規模で広がり、2040年までには10万人に達するだろうと言われている。
発がん性の指摘は50年も前からされている。国会でも1970年代前半から再三指摘され、92年には当時の社会党が使用禁止法案を提出したが、自民党や業界の猛反発にあい一度も議論されることなく廃案になっている。その意味では、薬害エイズと同様、役人と政治家の怠慢による国家責任は重い。
さて、このアスベスト問題は健康被害だけに注目が集まっているが、私はそれ以上に地域経済に与える影響が大きいのではないかと危惧している。
というのは、老朽化したビル解体工事が、アスベスト粉塵飛散防止と作業員の安全対策から費用と時間が大幅にアップし、計画通り進まなくなる可能性が高くなっているのである、ある解体業者は「ニュー北海ホテルの解体はいいタイミングで行われた。費用は1億7000万円かかったようだが、アスベスト問題が起きた今なら4億円以上かかるだろう。今、市内には解体予定のビルが数棟あるが、アスベスト問題から計画は頓挫する」と話していた。解体費用が2倍以上にふくらんで、再開発は進まないとの指摘だ。
アスベストを大量に使用しているのは55年(昭和30年)頃からの鉄骨の建物。老朽化が進み、そろそろ解体の時期にさしかかっており、2010年ごろがピークを迎える。解体工事費のアップから老朽化されたままに放置されることにでもなれば、土地も建物も動かなくなる。そうなれば、10年以上も下がり続けている旭川の地価をさらに押し下げる要因にもなりかねないのである。
もちろん、解体にあたって一番気をつけなければならないのは作業員と住民の安全である。自治体の中には、建築物解体時に職員を立ち合わせ飛散防止策を監視する方針を打ち出すところも出てきた。旭川市でも早急に安全対策をまとめる必要があり、また市民も監視の目を光らせる必要がある。