北海道経済 今月の視点【2006年08月号】希望はがんを治す大きな力

今月視点

【2006年08月号】 西田 勲

希望はがんを治す大きな力

日頃親しく付き合っているHさん自身から「がんに罹った。余命4カ月と宣告された」と聞かされ、ショックを受けた。彼は46歳の働き盛り。創業した店を市内でも知られた繁盛店に成長させ、家族にも恵まれ順風満帆であった。胃の調子が悪いので6月初旬に病院で検査を受けたところ、がんが発見されたのである。「胃がんが肝臓、そしてリンパに転移している進行がんで手の施しようがない。残る手だては抗がん剤治療だけ」と医師から説明されたと話す彼の口調は淡々としている。「誤診ということもある。もう一度他の医者の診断も受けてみたら」と私はセカンドオピニオンを強く勧めたが、すっかり医師を信頼している彼は検査結果に疑問を抱くことなく入院し闘病生活に入った。

敬服したのは彼の気丈さで、治療の合間をぬって市内に4つある店舗を閉め従業員に事情を説明し解雇し、また借金などの負債をきれいに清算するなど一連の事業整理をわずか半月ほどで済ませた。突然アクシデントに見舞われた経営者が事業を清算する際のお手本ともいうべき行動だと思う。

今は、彼の奇跡の回復を祈るばかりである。進行がんと宣告されても病状が大きく悪化せず元気に生活している人もいる。また、自然にがんが縮小していって医師を驚かせるケースも数多く報告されている。私のまわりにもがんから生還した人が何人かいる。人間の体というのは摩訶不思議なものなのである。

6月22日に、私が理事長を務める旭川青年大学の講師として、「がんばらない」「あきらめない」などのベストセラーで知られる鎌田實氏を迎えた。鎌田氏はがんに関する著作も多く、いろいろと参考になるお話を伺うことができた。青年大学の例会はお蔭様でいつも大勢の市民が出席してくれるが、この日はとくに聴衆が多く、がんに対する市民の関心の高さを再認識させられた。

鎌田氏の著書のひとつ『がんに負けないあきらめないコツ』の中にこういう記述がある。「病気を治す一番大きな力は、人の体に内在している治ろうとする力だとぼくは信じています。人の心の中にはナチュラルキラー細胞とかがん抑制遺伝子といった自らを守ろうとする細胞や遺伝子が実際にあります。希望がナチュラルキラー細胞を増やすといわれています。希望を持ち続けましょう。1つ悪い結果が出たからといって絶望に陥ってはいけません。次の新しい希望を持つことが大切です。いつでも希望を持ちましょう。冷たい余命告知を受けても負けてはいけません。未来のことはだれにもわからないのです」。がんからの生還を心から願いながら、さっそくこの本をHさんに贈った。

がん対策基本法が成立した。党派を超え、がん対策推進を求める国民の声にこたえる意義は大きい。これまで国は3次にわたるがん戦略をつくり予防に力をいれてきたが、効果はあまり表れず、今や日本人の死亡原因の1位はがんで、毎年30万人が死亡している。

がん対策予算が161億円とは余りにも少なすぎる。専門医も、予防・検診のための予算も少ない。検診受診率が乳がんで12%、胃がんや肺がん、大腸がんは10〜20%にとどまっており、これでは早期発見に至らず死亡率を下げることはできない。がん対策基本法が絵に描いた餅にならないよう願っている。