旭川から発信する情報コンテナ月刊北海道経済
月刊北海道経済は創刊以来40年。旭川市を中心とする道北地域の政治・経済・文化の話題を発信している雑誌です。
『小熊秀雄賞』が市民有志の力で復活することになった。資金難から昨年の募集を最後に廃止することが決まっていたが、新たに発足した小熊秀雄賞市民実行委員会(松田忠男会長)が事業を引き継ぐことになったもので、私も役員の一翼を担うことになった。
小熊秀雄は明治34年に小樽で生まれ、20歳の時に姉を頼って来旭し、8年間、新聞記者として旭川で過ごし詩や童話を発表。その後上京し、戦前の詩壇で活躍した。旭川での足跡を記念して旭川文化団体協議会が昭和43年に創設したのが小熊秀雄賞で、H氏賞と並ぶ高い水準が評価を受け全国的に知られるようになり、日本現代詩の普及に貢献してきた。しかし、景気の低迷で協賛する企業や個人が減り、旭川市からの補助金も削減されたためにやむなく昨年の第40回を最後に、募集取りやめが発表されていた。
全国に文学賞は数多くあるが、資金面で継続が難しくなっているのはどこも同じである。夏目漱石が旧制高校の教師として熊本にきて100年になるのを記念して96年に創設された草枕文学賞や、童話作家の加藤多一さんが実行委員長を務めたオホーツク文学館短歌賞・俳句賞など、ここ数年の間に惜しまれながら消えていったものも少なくない。
小熊秀雄賞の場合は、募集取り止めが発表された直後に「旭川ゆかりの詩人の名を冠した賞が消えるのは惜しい。何とか市民の手で継続できないか」と、あさひかわ新聞の工藤稔さんやFMりべ〜るの柳沢紀夫さん、元冨貴堂本店店長の氏家正実さんらが行動を起こした。賛同する市民が増え、また元上川支庁長で旭川出身の磯田憲一さんが理事長を務める『北海道文化財団』のバックアップも得られたことで昨年11月には実行委員会設立にこぎつけた。60人ほどの市民が出席した設立総会では、継続に関する活発な意見が交換され、受賞者に正賞「詩人の椅子」と副賞30万円を贈ることを決めた。家具の街旭川ならではの正賞・詩人の椅子は、旭川在住の彫刻家板津邦夫さんがデザインしカンディハウスが制作することとなり、またその後、審査員の一人に辻井喬さん(元西武百貨店社長堤清二のペンネーム)を迎えることとなった。
さて、順調なスタートと思える小熊秀雄賞の復活だが、資金面で心配がないわけでもない。必要な運営資金は年間およそ120万円だが今のところ法人、個人合わせて21万円余りしか集まっていない。同会の運営は市民の協賛金で賄うことが基本となっているので、市民の理解と支援をどれだけ受けられるかがカギとなる。そのためにはまず、小熊秀雄と旭川のかかわり、またその作品を市民に知ってもらうことである。会の運営委員長を務める氏家さんは、DVDやビデオなどを作製し市内の学校を巡回し、また詩集の再発行に取り組みたいと話している。もう一つ私から提案させていただくと、作品とその生涯を理解できる『小熊秀雄室』を市立図書館の中に設けてもらいたい。現在、小熊秀雄に関する資料は旧青少年科学館にある文学資料調査室に収蔵されているが、市民が気軽に閲覧できるような状態ではない。この機会にもっとクローズアップすべきである。
文学賞存続は地域文化の発展につながる。復活は有志の熱意で実現したが、賞を守り育てる意識は広く市民に求められる。