旭川から発信する情報コンテナ月刊北海道経済
月刊北海道経済は創刊以来40年。旭川市を中心とする道北地域の政治・経済・文化の話題を発信している雑誌です。
北海道を代表する人気菓子「白い恋人」の賞味期限がメーカーの石屋製菓(札幌市)によって改ざんされていた問題は、道民に大きなショックを与えた。社長の石水勲氏は当初、自身は改ざんに関与しておらず、製造部門の役員の指示によるものだと主張していたが、その後、改ざんが10年以上にわたって続けられ、石水氏もこの事実を知っていたことが明らかになった。石水氏は辞意を表明し、メインクバンクの北洋銀行から新社長を受け入れ、出直すことになった。
石水氏は単なる地方菓子メーカーの社長にとどまらず、道の観光振興、スポーツ振興に大きく貢献してきた。1995年には見学コースを備えた工場とミュージアム、販売店を兼ねた「チョコレートファクトリー」を札幌市内に開いた。翌96年にはプロサッカークラブ、コンサドーレ札幌に出資してスポンサーとなり、ユニホームに描かれた「白い恋人」の4文字は、商品の全国的な知名度をさらに高めた。昨年には小樽運河近くで、伊勢神宮前の門前町「おかげ横町」をイメージした「小樽出抜小路」をオープンさせ、多くの観光客や地元客を集めた。しかし、石屋製菓や「白い恋人」のイメージは、一連の不祥事のために大きく失墜した。今後の努力でどこまで回復できるのか、道民の関心は高い。
ところで、石屋製菓のように儲かっている企業が、なぜ姑息な手段を使って賞味期限を改ざんしたのだろうか。いろんな理由があるだろうが、石水氏によるワンマン経営が災いしたのだと思う。取締役5人のうち4人が石水家によって占められていたことが、この会社の風通しの悪さを物語る。実際、6月下旬には同社のホームぺージに不正を指摘するメールが寄せられたが、何ら対応はとられず、当局への告発につながった。石水氏が札幌商工会議所副会頭をはじめとする多くの公職に忙殺され、社長としてのチェックがなおざりになるという事情も重なったようだ。
石屋製菓の問題は、期限切れ原材料の使用やずさんな衛生管理で生産の一時停止に追い込まれた不二家によく似ているのではないか。どちらも同族経営、ブランド力を重視した販売戦略で、内部のチェック機能が働いていなかった。不二家で経営改革のために行われた外部の専門家の調査では、同族経営の結果風通しが悪くなり、トップが嫌う情報やネガティブな情報が届かない構造になっていたことが浮き彫りになっている。食肉偽装事件を引き起こしたミートホープもまた同族経営で、同族外の社員が社長にモノ申せるような雰囲気ではなかった。
本誌5月号が報じた当麻農協のセクハラ問題は、全国的な注目を集め、セクハラの張本人である組合長や課長が辞任に追い込まれた。当麻農協は同族経営でこそなかったが、被害者は組織内部で悲痛なSOSを発していたにもかかわらず、セクハラは犯罪という認識に欠ける上司はこれを黙殺し、結局は組合だけでなく「当麻」のブランドイメージにまで傷をつけてしまった。
企業の経営には絶えずチェックが必要である。とくに、経営者が社員の意見を聞く機会は多く作るべきだし、顧客のクレームには敏感に反応しなければならない。そしてなによりも、社内に情報が行き渡るように風通しを良くしなければならない。権限がトップに集中すれば、そのトップが喜ぶ情報だけが集まり、独善的な経営判断に企業がふりまわされかねない。
石屋製菓の不祥事は、どの企業にとっても対岸の火事ではない。とくに強いリーダーシップを発揮している経営者は、耳の痛い情報や部下の反対意見を真剣に受け止めているかどうか、この機会に自省してみてはどうだろうか。
最後に、かのナポレオンが就寝のさいに言ったとされる言葉を紹介しておこう。「良い報告は翌朝でいいが、悪い報告は即刻起こせ」