見本林と一体化して高めたい三浦綾子記念文学館の魅力

今月視点

【2008年3月号】 西田 勲

見本林と一体化して高めたい三浦綾子記念文学館の魅力

旭川を代表する作家、三浦綾子さんの著作や資料などを数多く保存、展示している「三浦綾子記念文学館」が、今年6月に開館10周年を迎えるのを機会に、会館内部のリニューアル、記念式典の開催、そして三浦さんと親交の深かった作家、宮尾登美子さんの講演会などを予定している。

三浦文学館は多くの三浦ファンの熱心な要望を受け、全国から寄せられた寄付金、道や旭川市からの補助金など合わせて約3億円を投じて建設された。10年間の来館者は約35万6000人を数え、いまでは旭川市にとって貴重な観光施設のひとつになっている。

しかし、運営が年ごとに厳しくなっていることも否めない。開館時には年間6万人以上を数えた入館者は、06年には2万3000人と、半分以下に減少してしまった。

記念館では入館者を増やすための対策を考えているが、妙案はなかなか出てこない。全国には数多くの文学館があるが、その多くが入館者の減少に頭を痛めている。ほとんどの記念館では行政が運営に深く関わっており、赤字を税金で補っているのが実情である。厳しい時代にあって、三浦文学館はまだ健闘しているほうだ。

三浦文学館は資料展示だけでなく、さまざまな活動を展開してきた。ひとつは小中学生を対象とした「三浦綾子作文賞」で、青少年の才能の発表の場になっている。綾子さんの夫である三浦光世館長が毎月開いている「小さな講演会」は、綾子さんの作品と人柄を紹介し、三浦文学を身近なものにしてくれる。三浦館長はこのほか、83歳という高齢ながら全国各地に赴いて講演会を開いており、一時は年間百回を越えるほどであったという。これらの地道な努力がなければ、入場者減はもっと早いペースで進んだかもしれない。

入館者減少に歯止めをかけるべく、館内のリニューアルのほか、展示物の入れ替えも計画されている。生前の綾子さんの映像や声を紹介し、綾子さんの存在をもっと身近にするという。さらに『三浦綾子研究』の創刊も計画されている。キリスト教の観点から人間の生き方を問いかけた三浦文学が、再び高い評価を得ることに期待したい。

一方で、文学館内部の改革だけでは、持続的な入館者の増加は望めないのではないかとも思う。

三浦文学館は見本林というすばらしい環境のなかにある。文学館自体の充実はもちろん大切だが、その周辺の魅力を高め、人々が集まってくるゾーンにするべきではないだろうか。過去には野外コンサートが開かれたこともある。夏季だけでも軽い飲食が楽しめるテラス風の施設を作るとか、野外でのパーティーや結婚式も面白い。これらの活動を、三浦文学館とは別に設立するNPOなどの組織に委託する方法もあるだろう。

大切なのは、市民や観光客に見本林まで足を運んでもらうことである。見本林の所有者は国だから、活用にはさまざまな制約が伴うと思うが、見本林の豊かな緑を残しつつ、そのすばらしさをアピールする方法はきっとあるはずだ。

市内のもうひとつの文学施設である井上靖記念館の隣には彫刻美術館があり、両方を訪れる人が多いはず。三浦文学館でも同じような相乗効果を発揮できないだろうか。

小檜山亨さんが旭川商工会議所の会頭だったころ、『氷点』の舞台となった見本林に三浦綾子さんの文学館を建てたいと発案したことがある。私もお手伝いさせていただき、綾子さんに近い数人の方を通じて打診したが、そのさい綾子さんに受け入れてもらうことができなかった。「全国の数ある文学館が、運営に四苦八苦している。自分の文学館がそんなことになって関係者に迷惑をかけるのは、大変心苦しい」というのが理由のひとつだった。

天国にいる綾子さんに安心していただくためには、開館10年という節目に、三浦綾子記念文学館の運営をしっかりと安定させることが必要だ。